九州工業大学 大学院 奥山圭一教授より提供いただいた運用データ、情報を記載します
小型深宇宙探査実験機における自動制御システムの設計手法 その1
黒岩史登,奥山圭一,BENDOUKHA Sidi Ahmed(九州工業大学),
西尾正則(愛知工科大学),森田大貴(鹿児島大学)
Auto System Control Method for the deep space probe
Fumito Kuroiwa , Kei-ichi Okuyama, BENDOUKHA Sidi Ahmed (Kyushu Institute of Technology), Masanori Nishio (Aichi Institute of Technology), Hiroki Morita (Kagoshima University)
Key Words: Space Engineering, Deep Space small probe, radiation tolerance
Abstract
A small, deep-space probe, Shinen2, was developed under collaboration with the Kyushu Institute of Technology and Kagoshima University. The Shinen2 was launched by an H2-A rocket as a piggyback space probe with the JAXA’s asteroid probe, Hayabusa 2, in 2014. The outer shape of the Shinen2 has a quasi-spherical diameter of 50 cm, and a mass of approximately 18 kg. An example of a deep-space probe to explore beyond the moon beyond has not been developed by any university, and no private companies exist. This paper describes the methods of the total system control of Shinen2 and compares measurement data and received data for checking the system. Besides, it shows result of radiation testing for measurement of radiation tolerance.
1.緒言
九州工業大学は2014年の12月にJAXAの小惑星探査機「はやぶさ2」の相乗り副ペイロードの一つとして深宇宙通信実験機「しんえん2」を開発した.
しんえん2では,ミッションの一つに月以遠での深宇宙通信がある.
「しんえん2」の制御系では,この深宇宙通信を安定させるために各Unitへの健全性確認を行い,
また,HK(House Keeping) dataを地上へ送信することでシステム全体が正常に機能しているかを評価,確認することを行った.
本稿では,「しんえん2」の制御系手法について,「しんえん2」の電気基板における放射線耐性について,
そして,受信データより「しんえん2」の宇宙での動作結果を報告する.
2. しんえん2
しんえん2は九州工業大学と鹿児島大学の共同開発により開発中の超小型深宇宙探査機である.図1にしんえん2の外観図を示す.
この探査機には, アマチュア無線帯を用いた深宇宙通信の実証を目的としており, 3つの通信系統を持つ. そして, WSJT(Weak Signal communication, by K1JT)通信方式を基にした通信を行い, 超小型探査機の深宇宙通信を行う.
また, 探査機の軽量化を図るため, 構造材料にCFRTP(Carbon Fiber Reinforced Thermoplastics)を一次構造として使用し, 宇宙機としては世界で初めての実利用を試みる.
図 1しんえん2の外観図
しんえん2は超小型の宇宙機であることから多くの機器を搭載できる質量の余裕がない.このため,熱制御方式は完全受動型とし,また,熱制御のためのヒータも搭載していない.
宇宙機が深宇宙を飛行するとき,その宇宙機の主な熱源は太陽と自身の発熱である.この宇宙機が回転するとき,太陽熱流束はほぼ均一化でき, 表面温度を平均化できる1). この熱制御を実現するため,しんえん2の外形はできる限り球形に近づけた.