九州工業大学 大学院 奥山圭一教授より提供いただいた運用データ、情報を記載します
小型深宇宙探査実験機における自動制御システムの設計手法 その3
表 2 ダウンリンクデータの構成
1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 |
Sync1 | Sync2 | BOF+ Class | DATA1 | DATA2 | DATA3 | DATA4 |
8 | 9 | 10 | 11 | 12 | 13 | |
DATA5 | DATA6 | DATA7 | DATA8 | CRC1 | CRC2 |
4.しんえん2制御系
図4にしんえん2電気機器ブロックダイアグラムを示す.
SAPは,Solar Array Panel, Txは送信機,Rxは受信機である.
しんえん2は,主に3つのUnitで構成されている.電力を供給するPCU(Power Control Unit),
通信を行うCCU(Communication Control Unit),
そして,それらのUnitを管理,監視するSCU(Shinen2 Control Unit)がある.
このSCUは,”God SCU”と”Slave SCU”の2つのCPUで構成される.
図 4 しんえん2電気機器ブロックダイアグラム
< God SCU >
“God SCU”には主に2つのタスクがある.
- PCUの制御
- Slave SCU,各PCUへの健全性の確認 “Slave SCU”には主に3つのタスクがある.
- < Slave SCU >
- “God SCU”は生存確認信号を各基板へ送り,各基板はその信号を受信するとフィードバック信号を”God SCU”へ返すことでその基板の健全性,並びに,生存を確認する.
- HK data, 放射線測定データの測定,並びに,EEPROMへの保存
- CCUへHK data,放射線測定データを送信する.
- 深宇宙通信対策として,距離によって送信データの繰り返し回数を変化させる.以上のように”God SCU”, ”Slave SCU”で構成されるSCUに関しては生存確認,CCUへの送信回数の変化など「しんえん2」のミッションに大きく影響の出るUnitだということがわかる.
この繰り返し回数は,地球から月までは6 slotsのデータを2回ずつCCUへ送信する.
月以遠では,2 slots のデータを12回ずつCCUへ送信する.
この深宇宙通信を考慮した対策を講じることで後のデータ解析の際にデータの整合性を高めることが可能となる.
5. まとめ
しんえん2は深宇宙通信をミッションの一つとして掲げており,
その通信方式はWSJTである.その通信を行うためにSCUによって探査実験機自体を制御し,
各電子基板の健全性,生存を確認し,地球へデータの送信を行っている.
また,深宇宙通信をより遠い距離で行い,データの解析の精度を上げるために
SCUからCCUへの通信の回数を変化させている.
SEE放射線試験の結果からCPUにあたるPIC16F877による健全性確認信号にて
放射線環境が過酷な場合に意図しない現象を確認されたが,
データ送信部においては動作不全を起こすことなく送信され続けた.
データ解析値の結果からバッテリーの電圧,電流,温度ともに正常値を示しており,
他の受信データも特に変わった値を示すものはなかったために
深宇宙においても正常動作をしていくことが受信結果よりわかる.
参考文献
1) 伊藤浩司, 岩上敏男, 日比野茂, 奥山圭一, 中須賀真一: ガンマ放射線を照射されたPEEK/CFRPの機械的特性, 第55回宇宙科学技術連合講演会講演集, 2011.
2) Joe Taylor, WSJT6 User’s Guide and Reference Manual, August 10, 2006
3) Joe Taylor, WSJT: New Software for VHF Meteor-Scatter Communication, QST, December 2001, pp. 36-41.
4) HDSDR home page, available form http://www.hdsdr.de/