中国の主要リチウムイオン電池メーカー:CATL(寧徳時代)の最新の経営状況3
投資動向と経営戦略
CATLは市場リーダーの地位を盤石にするため、積極的な設備投資と戦略展開を行っています
生産能力拡大については、2023年末時点で総設備容量552GWhに達し、さらに約100GWh分の新工場建設を進めています
国内外での新拠点投資も加速しており、例えば欧州市場向けにハンガリーで100GWh規模の大型電池工場を建設中(メルセデス・ベンツ等へ供給予定)、スペインではStellantisとの合弁工場計画も進行中です
加えて、ドイツでもエルフルト近郊に工場を設置し欧州メーカー各社への供給基盤を築いています
米国市場に関しては地政学的リスクを考慮しつつ、フォードとの提携による現地生産スキームを模索するなど参入策を検討しています
素材調達面でも、リチウムなど主要資源への投資を行い価格高騰期の安定供給を確保してきました(2022年に中国江西省で炭酸リチウムの大規模ハブを開設するなどの施策
最近では原材料市況の落ち着きに伴い自社鉱山生産を一時停止するなど柔軟に対応しています
さらにCATLは研究開発にも巨額投資を続けており、全固体電池やナトリウムイオン電池など次世代技術開発で先行する姿勢を示しています
実際、2023年のR&D費用は約184億元に達し前年から約19%増加しています
注目すべき戦略として、CATLは事業領域の多角化にも乗り出しています
同社は従来の電池セル供給に留まらず、2024年にはEV用「スケートボード型」車体シャシー(電池・駆動一体型プラットフォーム)の発表に踏み切りました
これにより完成車メーカーとの協業を深め、単なる電池供給者からシステム提供者へと価値領域を拡大しています
また、定置型の大容量蓄電システム(電力グリッド向け蓄電池)市場にも本格参入する戦略を掲げており、エネルギーインフラ分野での需要取り込みを図っています
こうした新規事業展開は、EV市場の成長鈍化リスクに対する長期的な備えであり、中長期の成長エンジンを複数持つことで経営の安定性を高める狙いがあります
加えて、CATLは2025年に向けて香港市場への株式上場(新規株式公開:IPO)を計画中と報じられており、この資金調達により海外展開や研究開発を一層強化する見通しです