EVE Energy(惠州億緯鋰能)詳細調査レポート: ESG戦略(環境・社会・ガバナンスへの取り組み)

EVE_ENERGY惠州億緯鋰能
環境(E)
EVEは環境負荷の低減とカーボンニュートラル達成を経営の重要目標に掲げており、中国政府の「炭素ピーク・炭素中和」戦略に呼応し、自社は2030年までに事業運営でカーボンニュートラルを実現、2040年までにバリューチェーン全体でもカーボンニュートラルを達成するとコミットしました
これを実現するため、「CREATEカーボンニュートラル行動計画」を策定し、①カーボンフットプリント管理、②リサイクルと資源循環、③極限までの省エネ製造、④内部・外部監査、⑤技術イノベーション、⑥エネルギー転換の6つの側面からグリーン経営を推進しています
具体策として、製品ライフサイクル全体のCO₂排出量データを収集・分析する社内プラットフォーム「E-Carbon」を2022年に稼働させ、サプライチェーンも含めた排出源管理を強化し
さらに電池業界で初めて欧州の新電池規則(EU 2023/1542)に基づく製品カーボンフットプリント検証を取得し、ハンガリー工場向けのTÜV認証を2024年に獲得しています
工場では再生可能エネルギー(太陽光発電設備の導入、グリーン電力証書の取得など)を積極活用し、2025年までに主要生産拠点の50%以上をクリーン電力で賄う目標です(社内計画による)
また廃棄物の削減・再資源化にも取り組み、不要になった電池のリサイクル事業を推進しています
恵州本社にはリサイクルセンターが設置され、使用済み電池からのレアメタル回収と材料リサイクルを行っています。こうした努力により、EVEは2023年の業界カーボンフットプリント・リーダーボードで1位となり、業界のグリーン発展を牽引していると評価されました

社会(S)
社会的責任の面でも各種施策を展開しています
まず労働安全・衛生(EHS)面では、全社的なEHS管理制度を確立し、専任チームが安全教育と職場点検を実施しています
重大労災ゼロを維持することを目標に掲げ、2024年現在まで大きな労働災害は報告されていません
また従業員の多様性・能力開発にも注力し、若手技術者向けの研修プログラムや管理職候補育成制度を運用しています
地域社会への貢献では、本社のある恵州で1000億元規模の新エネルギー電池産業拠点構想を推進し、地元企業への技術移転・支援や雇用創出を図っています
恵州市政府との協定に基づき、少なくとも20億元を研究開発センターや高度人材誘致に投資する計画で、これにより数万人規模の雇用が地域にもたらされる見込みです
加えて、環境教育や社会福祉にも参画しており、貧困地域への義捐、植林活動への社員ボランティア派遣なども行っています(CSR報告より)
中国国内では新エネルギー車産業の「新三様」の一角として輸出拡大に貢献したことで「双炭(カーボンピーク・中和)貢献賞」を受賞しています
このように、従業員・地域・社会全般への責任を果たすことで企業価値の向上に努めています

ガバナンス(G)
コーポレートガバナンスの面では、上場企業として取締役会および監査委員会の機能強化を図っています
取締役会には独立取締役が複数名選任され、内部統制やコンプライアンスのチェック体制を整えています
経営の透明性確保のため、ESG情報開示にも積極的で、2023年度には初めて「サステナビリティ報告書」を公表しました(新浪財経経由で開示)
この報告書では気候関連財務情報開示(TCFD)や持続可能な開発目標(SDGs)への取り組みも示されています
腐敗防止に関しては社内に廉潔委員会を設置し、社員行動規範を厳格化、サプライチェーンガバナンスにも注力しており、紛争鉱物ポリシーを遵守し、主要サプライヤーに対して労働環境・環境対応の監査を実施しています
2024年には国際的なESG評価であるMSCIやSustainalyticsにおいて、前年よりも格付けが改善し、投資家からの評価も高まりました(具体的スコアは非公開)
また、株主との対話も重視し、定期的なIR説明会や工場見学を開催しています
さらにステークホルダーエンゲージメントの一環として、地元住民との意見交換会を瀋陽・恵州で開催し、環境モニタリングデータを共有するなど透明性向上に努めています

カーボンニュートラル目標
改めて、EVEは2030年運営カーボンニュートラル、2040年バリューチェーン全体でカーボンニュートラルという大胆な目標を掲げています
これは中国政府目標(2060年カーボンニュートラル)より20年以上前倒しした意欲的なものです
達成に向け、省エネ投資(工場のエネルギー管理や設備高効率化)、グリーン電力購入拡大、カーボンオフセットの活用など総合的に取り組む方針です
電池リサイクルによる二次原料活用は特に重視しており、将来的には新電池に使用するコバルトやリチウムの30%以上をリサイクル由来にする計画です(社内目標)
また製品そのものがEV普及や再エネ貯蔵によるCO₂削減に貢献するため、自社の事業成長が社会全体の脱炭素に寄与するというポジティブな循環を生み出しています

総評
EVE EnergyはESG(環境・社会・ガバナンス)全方位で高い意識を持ち、具体的なアクションを起こしています
環境面では大胆なカーボンニュートラル宣言と実行計画、社会面では安全・人材・地域貢献、ガバナンス面では透明性と倫理遵守の向上に努めています
これらは単なる企業の社会的責任に留まらず、グローバル市場で信頼されるバッテリーサプライヤーになる上で不可欠な要素です
ESGに優れることは欧米自動車OEMからの調達要件にも合致するため、EVEの積極的なESG経営は事業発展にも直結しています
同社は「持続可能な成長企業」として、環境調和型の電池産業リーダーになることを目指しています