EVE Energy(惠州億緯鋰能)詳細調査レポート:バッテリー技術詳細(LFP、NCM、ナトリウムイオン電池、全固体電池など)

EVE_ENERGY惠州億緯鋰能
リン酸鉄リチウム(LFP)電池
LFP電池はコバルトを含まず安価で安全性が高い点が特長で、EVEはこの分野で大きな強みを持つ
主にエネルギー貯蔵システム(ESS)や商用車(バス・トラック)向けに大容量LFPセルを供給しています
280Ahや306Ah級の角型セルは米国Powin社やABS社の大型蓄電プロジェクトに採用され、高いサイクル寿命と安全性が評価されている
2024年には628Ahという超大容量セルも投入予定であり、LFP技術の限界を押し広げています
エネルギー密度はNCMほど高くないものの、定格容量が大きいためシステムあたりのエネルギー密度向上に貢献します
また低温特性改善や急速充電対応にも取り組んでおり、最新セルでは-20℃環境での放電性能向上や1C〜2C級の比較的高速充電にも対応(※具体的数値は非公開)
総じてEVEのLFP電池は安全・長寿命を武器に、電網蓄電から電動物流車両まで幅広く用いられています

ニッケル・コバルト・マンガン(三元系/NCM)電池
EVEのNCM電池は高いエネルギー密度と出力密度を特徴とし、主に乗用EV向けに使われている
BMWに供給予定の円筒型セルはNCM系であり、800V高電圧対応や350kW急速充電対応など最先端の性能を実現しています
このセルでは冷却プレートを組み込む独自パック設計で安全性も確保されているようです
EVEはNCM811などハイニッケル正極を採用しつつ、独自の添加剤やコーティング技術で寿命と安全性の両立を図っています(具体的特許から推察)
エネルギー密度はセル単体で250〜300Wh/kgに達し、車両の長距離走行を可能にしている
パウチ型NCM電池についてもSKとのJVでノウハウを蓄積しており、今後多様な形態でNCM電池を展開できる基盤がある
ただNCM系は高コストゆえ、EVEとしては高級EVや航空用途など付加価値の高い領域に集中投入する戦略とみられます

ナトリウムイオン電池
ナトリウムイオン電池はリチウムを使わない次世代電池として注目されており、同業他社(CATLなど)は2023〜2024年に相次いで試作品を発表している
EVEも社内の先端研究部門でNaイオン電池の開発に取り組んでいるとされています
公表ベースでは量産計画は明らかではありませんが、CATLが2023年にNaイオン電池を発表した際、EVEも関連特許を多数保有していることが報じられました(※特許分析による)
ナトリウム電池はエネルギー密度でLFPにやや劣るものの、低温性能やコストで優れ、固定型蓄電や二輪車などに有望視されているようです
EVE経営陣も次世代技術として重視している旨を示唆しており、業界標準化団体等を通じた技術ロードマップ策定にも関与しています
2025年以降、試作セルのデモや一部用途でのパイロット導入が期待されます

全固体電池
全固体電池(ASSB)は液体電解質を固体に置換した究極の安全・高エネルギー密度電池です。EVEは「前沿研究(フロンティア研究)」部門を設置して全固体電池の材料・プロセス研究を行っている
具体的には硫化物系固体電解質の合成やリチウム金属負極の高耐久化に関する特許を出願しているとみられます(実際、EVEは電池キャップ構造や積層電極に関する先端特許を取得しています)
現時点で商用化には至っていませんが、試作セルレベルではエネルギー密度400Wh/kg超を目指している可能性があります
他社との連携では、清華大学や中国科学院といった学術機関との共同研究も噂されています
EVEはこの分野での知的財産も蓄積中で、2020年代後半〜2030年頃の実用化に向けて備えている
全固体化により飛躍的な性能向上と安全性向上を実現することがEVEの長期戦略の一つです

その他技術
この他、EVEは電池製造プロセスや部材技術でも先進的です
例えばセパレーターにセラミックコーティングを施した耐熱複合セパレーターや、電極高速積層技術などで特許を取得しています
BMSではAIを活用した劣化予測アルゴリズムを開発し、システムの安全運用に貢献している
また、2024年には米ABB社との協業でスマート工場標準を策定し、品質データのリアルタイム収集による製造機械学習モデルを導入する計画です
これらの技術革新により、EVEは高性能電池の大量生産体制と品質優位性を築いています