EVE Energy(惠州億緯鋰能)詳細調査レポート:製品概要(バッテリーの種類・技術特徴・用途)

総論
中国の主要リチウムイオン電池メーカー 5. EVE Energy (惠州億緯鋰能)
EVE Energyはリチウムイオン電池の総合メーカーであり、電気自動車(EV)向け動力電池、エネルギー貯蔵システム(ESS)向け電池、民生・産業向け電池など幅広い製品ラインアップを持ち
電池形態も円筒型、角型、ラミネート(パウチ)型を取り揃え、正極化学もリン酸鉄リチウム(LFP)からニッケル・コバルト・マンガン系(三元系/NCM)まで網羅している

EV用動力電池
乗用車向けには高エネルギー密度のNCM系電池を主力とし、特に円筒型セルに強みがある
EVEは次世代EV向けに直径46mmの大型円筒セルを開発しており、BMWの新世代「Neue Klasse」車両に採用予定
このセルは800V対応のセル・トゥ・パック(CTP)構造で、最大350kWの超急速充電に対応する高性能が特徴
また、角型のLFP電池も乗用車や商用車向けに供給している
安全性と長寿命を重視するバス・トラックなど商用EVにはLFPを、航続距離を重視する乗用車高級モデルにはNCM系を提供するなど、用途に応じたケミストリーを展開している
さらに、SKイノベーションとの合弁でパウチ型電池の製造にも参画しており、自社技術の幅を広げている

エネルギー貯蔵システム(ESS)用電池
再生可能エネルギーの蓄電需要拡大に伴い、EVEは大容量セルの開発に注力している
主力は安全性・コスト優位性に優れるLFP電池で、280Ahや306Ahといった大容量セルを商用化し、グリッド蓄電プロジェクトに提供している
2024年末には628Ahもの超大容量セルの量産開始を予定しており、グリッド規模の蓄電やEV超急速充電ステーション向けに革新的製品を投入しる
EVEはこのESS用セル分野で世界第3位のシェアを誇り、高い信頼性と寿命性能で評価されている
モジュールやパックまで含めたエネルギー貯蔵ソリューションも展開しており、住宅・産業用の分散型蓄電から大規模電力網用まで対応している

民生・産業用電池
EVEは民生用リチウム電池でもグローバルリーダーです
特に一次電池(非充電式リチウム電池)では世界トップクラスの地位を占めており、スマートメーターやセキュリティ機器などIoTデバイス向けに幅広く採用されている現状です
また小型円筒形やコイン形などの二次電池も携帯電子機器向けに供給し、産業用途では電動工具や掃除機、電動二輪車など向けに21700型等の円筒セルを提供している
マレーシア新工場ではこれら円筒電池を年6億8千万本規模で生産し、電動工具・ライトEV市場を支えています

技術的特徴
LFP電池はエネルギー密度こそNCMに劣るものの、安全性・熱安定性が高く寿命が長い点が強みであり、EVEのLFPセルも数千回サイクルの長寿命を実現
NCM電池は高エネルギー密度(重量エネルギー密度で200〜280Wh/kg級)で航続距離延伸に寄与し、EVEはコバルト含有量を低減しつつ高ニッケル化したNCM811など先進正極材料にも取り組んでいるとみられる
EVE製円筒セルはテスラの採用する4680型に類似しつつ独自改良が加えられており、急速充電性能とエネルギー密度の両立を図っており、さらに電池パック統合技術(CTPやモジュール技術)、BMS(バッテリーマネジメントシステム)も内製化しており、システム全体での性能最適化を追求しています