EVE Energy(惠州億緯鋰能)詳細調査レポート: 商品展開(EV、エネルギー貯蔵システム、産業用、電子機器向け)
電気自動車(EV)向け
EVEの動力電池は多くのEVメーカーに採用されている
乗用車分野では、BMWが次世代EV向けバッテリーサプライヤーにEVEを指名し、ハンガリー新工場から46mm円筒セルの供給を受ける予定です
ダイムラー(メルセデス・ベンツ)とも2018年に10年間のバッテリー供給契約を結んでおり、高級EV向け角型電池を提供しています
中国国内でも長安汽車のハイブリッド車(HEV)向け電池モジュール供給や、一汽奔騰(FAW Bestune)のEV向け電池供給契約を獲得するなど、有力自動車OEMとの取引が拡大している
また、小鵬汽車の飛行自動車(AeroHT)向け電池サプライヤーにも選定されるなど、新興領域にも進出しています。
商用車: 商用EVでは、ダイムラー・PACCARと北米で設立した合弁会社Amplifyにおいて、大型トラック向けLFP電池を共同生産します
年産21GWh規模の工場で2026年から供給開始予定で、フレイトライナーなどの電動トラックに搭載、中国国内でも電気バスや物流車向けに電池を供給しており、例えば荊門工場では宅配三輪車や小型商用EV向けLFP電池を量産しています
電動二輪車市場でもEVEの電池(「麟驹」シリーズ)が採用され、2024年には初の量産出荷が行われました
このように乗用車からバス・トラック、二輪車まで、多様なEV用途をカバーしています
エネルギー貯蔵システム(ESS)向け
ESS分野はEVEの成長を牽引する柱となっている
同社のLFP電池は大規模蓄電プロジェクトで相次ぎ採用され、米国のPowin社とは2021年に最大500MWh分のLFP電池供給契約を締結し、2023年にはオーストラリア・NSW州のWaratah巨大蓄電プロジェクト向けに10GWhのセル供給契約も結びました
さらに2024年には追加で15GWhの長期供給契約を締結し、グリッド向け蓄電市場で大口受注を獲得しています
米国ABS社にも13.4GWh分の角型LFPセルを供給する契約があり、国内外の蓄電システムメーカーとの取引が拡大しています
特筆すべきは、2024年12月に米テスラ社との間でエネルギー貯蔵システム(Megapack)向け電池の供給契約を締結したことです
供給開始は2026年から、EVEのマレーシア工場製セルが用いられる予定で、これによりテスラはEVEを第6の電池サプライヤー、ESS用セルでは第3のサプライヤーとして迎えることになる
この契約はEVEの技術と生産品質が世界トップクラスの水準にあることを示すマイルストーンです
EVEの電池は大規模な送配電網用から商業施設・工場の定置蓄電、さらには住宅用太陽光+蓄電システムまで幅広く使われています
分散型エネルギーリソース市場にも照準を合わせており、家庭・産業向けハイブリッドインバーター+蓄電ユニットのソリューション提案も行っています(日本市場でも2025年の国際スマートエネルギーWeekで製品展示)
EVEはこのESS市場での需要増に応じ、2024年には全社出荷50GWhのうち60〜70%を海外案件が占める計画とされています
産業・特殊用途
EVEの円筒型電池は電動工具や家電製品など産業用途にも広く使われています
例えば米国大手電動工具メーカー各社は21700型セルをEVEから調達しており、コードレス工具の高出力化・長時間化に貢献しています。マレーシア工場はこの電動工具市場を主眼に置いて建設され、グローバル需要に対応しています
またロボット掃除機やコードレス掃除機向けには高容量セルを供給し、機器の稼働時間延長に寄与しています
産業機器分野では無停電電源装置(UPS)や通信基地局用バックアップ電源にもEVEのLFP電池が採用されている
2024年にはトルコのAksa社と産業用・蓄電システム用バッテリーモジュールの現地生産合弁で基本合意するなど、各国の需要に合わせた展開も始まっています
民生(コンシューマ)用途
前述の通り、EVEはIoTデバイス向けのリチウム一次電池で世界トップクラスです
スマートメーターやセキュリティセンサー用のリチウム一次電池(スローブ放電タイプ)は、信頼性と長寿命(10年以上無保守)を武器に世界中の公共インフラで使われている
また、スマートウォッチやBluetoothイヤホン等の小型リチウムイオン電池も手掛けており、エナジードリンク缶サイズの小型セルからCR123Aサイズの電池までラインナップがあります
これら民生分野の売上は安定しているものの、市場成熟により近年微減傾向にあります
それでもEVEは製品開発力で市場シェアを守っており、新たなIoT需要(LPWA通信機器など)にも対応した次世代一次電池を開発中です
総じて民生用途では「信頼性のEVE」としてブランドが確立されています