SVOLT Energy Technology(蜂巣能源)詳細調査レポート:資金調達・IPO・研究開発投資等の資本動向

SVOLT Energy Technology調査レポート
蜂巢能源の資本政策と投資動向について、資金調達履歴、IPO計画の推移、研究開発投資の観点から記載します

資金調達履歴

SVOLTは設立以来急速な事業拡大を資金面で支えるため、大型の資金調達を重ねてきました
2021年
シリーズA(2021年2月、35億元)
シリーズB(2021年7月、102.8億元)
シリーズB+(2021年12月、60億元)
の3度の大型増資を行い、累計調達額は200億元超に達しました

主要な出資者として、中国政策系ファンドの国調基金や京津冀産業発展基金、不動産大手の碧桂園創投、IT企業のXiaomi(小米)、老舗投資機関のIDG資本、生命保険大手の泰康投資など、多様な戦略投資家が名を連ねます
これにより2021年末時点の投後評価額は約460億元(約60億ドル)となりました
さらに2022年にも追加のシリーズ資金があったとみられ、天眼查などによれば2023年時点で7回の増資を完了しています
一方、創業者の魏建軍氏がその都度出資比率を維持し、依然大株主であり続けました
この潤沢な資金調達により、各地工場建設や技術開発に必要な資本を確保し、赤字決算を出しつつも事業拡大を継続できました

IPO計画と撤回
上記の資金調達を経て、SVOLTはさらなる資本確保と企業ブランド向上のため新規株式公開(IPO)を目指すようになります
2022年11月に上海科創板へのIPO申請を正式受理され、150億元の資金調達計画を掲げました
調達資金の用途は、常州・湖州・遂寧の各工場プロジェクト、無錫のR&Dセンター建設、および三元高エネルギー密度電池、第二世代無コバルト電池、短刀電池、新型電池の開発に充当するとされました
しかし、審査の過程で収益性や関連取引の課題が指摘され、2023年12月に会社側が自主的にIPO申請を撤回し、上場プロセスを一時停止
上場中止の理由について、蜂巢能源は「様々な要因を考慮し会社と株主の最善利益を優先した結果」と説明し、今後は他の資金調達手段を検討すると表明しています
業界では、未だ利益が出ていないことや、150億元という極めて大きな調達額、さらに長城汽車との取引集中リスクなどから、上場後の市場受容性に懸念があったと分析されています
SVOLTにとって、IPO撤回は一時的な後退ですが、資本市場の状況が改善し自社の財務指標も向上すれば、将来的に科創板または他の市場で再挑戦する可能性は残されています

研究開発投資
資本面で特筆すべきは、SVOLTが研究開発(R&D)への巨額投資を続けていることです
2020年から2023年までの4年間の累計R&D投資額は33.6億元に達しました
売上に占めるR&D費の割合は先述のように20%前後と高く、特許出願件数は国内業界トップクラスです
例えば2020年の新規公開特許は業界全国1位を記録しました
また、国家クラスの重点プロジェクトにも採択されており、「高端機能・智能材料」や「14次五カ年計画 新エネ車」など政府プロジェクトを受託しています
これらは政府からの補助金や科研費も受けていることを意味し、資金の一部は公的支援で賄われています
さらに2023年にはOctopusプロジェクトという社内新事業も立ち上げ、エネルギー管理システムやBMSの高度化にも投資しています
研究開発投資は将来的な技術的優位と収益源(高性能製品による差別化、特許ライセンスなど)をもたらす見込みであり、SVOLTが黒字化・上場を目指す上で重要な基盤となります

政府・政策支援
資本動向の一環として、中国政府・地方政府からの支援も挙げられます
各工場プロジェクトには地方政府との協定に基づく用地提供や税制優遇があり、例えば成都や達州では市政府誘致の百億元級プロジェクトとして注目されました
また2023年には江蘇省トップの信長星省長がSVOLTを視察するなど、政策面での後押しも受けています
これらは直接的な資金提供ではないものの、低金利融資の斡旋や補助金など間接資金となる場合があります
実際、SVOLTは成都で銀団ローン75億元を調達しており、国家開発銀行など政策金融の融資が含まれる可能性があります

以上を総括すると、蜂巢能源は潤沢なエクイティファイナンスにより短期間で巨大資本を調達し、それを積極的な設備投資と研究開発に投入してきました
IPOには一旦ブレーキが掛かったものの、財務戦略の柔軟性(民間資金調達への切替など)を示し、現在も増資による資本力強化と政府支援の活用で成長を続けています
今後、業績が改善すればIPO再挑戦も現実味を帯び、研究開発投資が結実すれば収益力向上にも寄与するでしょう
SVOLTの資本動向は、同社が**「電池産業の次世代リーダー」**として台頭するための土台を築いている段階と言えます