SVOLT Energy Technology(蜂巣能源)詳細調査レポート: 経営状態
蜂巢能源(SVOLT)は急速な売上成長を遂げています
2019年の売上高約9.29億元から2022年には997.04億元に拡大し、過去3年間の年平均成長率(CAGR)は約139.6%に達しました
特に2022年単年の売上は前年の約2.23倍という結果になりました
しかしながら、一方で大規模な研究開発投資や生産能力拡大、原材料高騰の影響により、同社は依然として最終損益が赤字です
2019~2022年の各年度において純損益はそれぞれ**-3.26億元、-7.01億元、-11.54億元、-22.56億元と赤字幅が拡大し、4年間の累計損失は約443.65億元に上ります
売上総利益率は2022年時点で4.57%と同業平均に比べ低水準ですが、徐々に改善傾向にあります
会社側は2025年に損益分岐点を達成し黒字化する見通しを示しています
財務面では債務も増加傾向ですが、これは主に設備投資と運転資本の確保によるものです
累計で20億元超の外部資金調達を行い、2021年にはシリーズB/B+ラウンドで約16.28億元を調達し、投後評価額は約460億元に達しました
直近(2023年)の融資ラウンドは公開されていませんが、IPO申請時点での想定時価総額は600億元規模と報じられています
なお、2023年前3四半期時点で、売上に占める研究開発費比率は約20.7%と高く、2019–2021年累計で15億元以上を研究開発に投じています
これら積極的な投資が将来の収益改善につながると期待されています
顧客基盤の多角化
もともと長城汽車グループ(Great Wall Motor)が設立母体であり、初期の売上の大部分を占めていましたが、近年顧客基盤の多角化が進んでいます
2020年には売上の約98.7%が長城汽車関連からでしたが、2022年には約39.98%まで低下しました
代わりに吉利汽車、上汽通用五菱、哪吒汽車(合衆新能源/Hozon)、理想汽車(Li Auto)、零跑汽車(Leapmotor)など中国国内の新興EVメーカーとの取引を拡大し、2023年にはそれら複数のプロジェクトが始動しています
また、PSA(Stellantis)など欧米大手との協業も報じられており、国際的な顧客開拓も進行中です
この結果、2021年初頭には売上の99%以上を関連会社が占めていたのが、2022年末には非関連顧客への売上が約70%に達し、関連依存から脱却しつつあります
市場シェアと出荷量
中国動力電池市場における蜂巢能源のシェアは、2022年に装車容量6.10GWhで約2.07%(国内第7位)でした
CATLやBYDなどの大手に比べると小規模ですが、成長率の高さから「電池業界の黒馬(ダークホース)」とも称されています
とりわけPHEV(プラグインハイブリッド)向け電池で高い評価を得ており、蜂巢能源の「L400短刀電池」は2023年、中国におけるPHEV搭載の“ヒット商品”となりました
この勢いにより2023年には出荷量・市場シェアともにさらに向上したとみられます(短刀電池は2023年1月から2024年7月までに累計5.41GWh・約15万台分出荷されています)
とはいえ、2023年末時点でも累積損失が解消していないため、引き続き財務の健全化が課題です
同社はIPOを目指していましたが、2023年12月に科創板(中国版ナスダック)への新規上場申請を自主的に撤回し、別途資金調達策を模索すると発表しました
これは、大型調達による市場圧迫や利益未達リスクを勘案した戦略的判断とされています