SVOLT Energy Technology(蜂巣能源)詳細調査レポート: 国際展開
蜂巢能源は中国発の電池メーカーとして、近年積極的に国際展開を模索している状況です
海外顧客の開拓、現地企業との提携、輸出による市場参入など、多面的な戦略を展開しています
海外顧客と採用事例
直接の海外完成車メーカー顧客としては、Stellantis(旧PSAグループ)との協業が知られています
具体的な車種名は明らかになっていませんが、欧州向けモデルへの供給も視野に入れた提携とみられます
また、2023年には吉利汽車のスウェーデン子会社ボルボ向けに電池供給の噂も報じられました(吉利・Volvoの合弁EVでの採用可能性)
さらに、上汽通用五菱(GMと中国上汽の合弁)は東南アジア輸出を見据えたEV「宏光Mini EV」などに蜂巢の電池を搭載しているとの情報があります
これらは間接的に海外市場へ展開している例です
中国ブランドの欧州輸出車(例えば長城汽車ORAブランドのEVがドイツなどで販売開始)にも、蜂巢能源製バッテリーが積まれているケースがあります
このように、中国国外のユーザーにも蜂巢エナジーの電池が届き始めている状況です
海外生産・拠点展開
上記の通り、SVOLTはタイとドイツに現地生産拠点を設ける計画を進めました
タイ工場は東南アジアでの足がかりとして成功し、現地組立による迅速な供給体制を構築しました
タイの合弁パートナーBanpuとの協業を通じ、ASEAN地域のネットワークを拡大しています
一方、ドイツのケースでは、用地確保・設備投入まで行いながらも事業環境の変化で撤退に至りました
この経験は、欧州での現地生産のリスクを再認識させ、以後の海外戦略に影響を及ぼしています
例えば、SVOLTは2024年以降、欧州市場については無理に現地生産するのではなく、中国からの完成品輸出や欧州企業との提携による参入を検討するとみられます
実際、2023年8月にはフィンランド政府関係者と生産拠点について協議した報道もあり、欧州内での別の協業の可能性も残していますが、ドイツ撤退後は慎重姿勢が予想されます
国際的な提携関係
東南アジアでは、タイ国営石油会社PTTグループとの戦略的協力を2023年7月に締結しており、エネルギーインフラとの連携でEVや充電事業への統合的展開を図っています
タイ以外にも、2023年8月にはアフリカ(ザンビア)の農業ビジネス展示会に参加し、農業向け電化ソリューション・蓄電システム普及の可能性を探るなど、開拓市場での露出を高めました
また、バンコク銀行系のBanpu社とは出資を伴う提携関係にあり(2023年のシリーズ資金調達にBanpu参画)、タイ工場運営に協力しています
さらに、中国国内企業との連携としては、2023年に協鑫集団(GCL)とエネルギー貯蔵用短刀セルの協業を発表し、大型ESS事業での展開強化を図っています
これらの提携はいずれもSVOLT製品の海外適用範囲を広げ、現地市場の知見や販路を得ることを目的としており、戦略的投資家の誘致と並行して進められています
輸出動向
SVOLTの電池そのものの輸出台数・容量は公式には公表されていませんが、推察される動きとして東欧・ロシア向けに一部輸出が始まっているとの情報もあります
中国製EVバスや電動二輪車に搭載されて輸出されるケースも考えられます
また北米市場については、米中関係の影響で難しい面がありますが、北米の蓄電システムプロジェクト向けにセルを供給する話が取り沙汰されたことがあります
SVOLTは海外認証(例えば欧州のUN/ECE R100など)も取得しており、品質・安全基準面での輸出準備は整えています
全体として、蜂巢能源の国際展開は「まずは近隣新興国、次に欧米」**という段階的アプローチが見て取れます
東南アジアで実績を積み、将来的に市場環境が整えば欧州・北米にも再挑戦する可能性があります。ただし2024年現在、欧州戦略は一旦後退させており、中国・アジア圏での拡張に注力する局面です
海外市場は各地域で競合状況・政策が異なるため、SVOLT経営陣も柔軟に方針を調整しつつ「グリーンエネルギーを世界へ届ける」というビジョンの下、段階的にプレゼンスを拡大しているところです