REPT BATTERO(瑞浦能源)詳細調査レポート:工場・生産能力(所在地・生産能力・スマート工場化・拡張計画)

REPT BATTERO(瑞浦能源)詳細調査レポート
生産拠点の所在地
本社および初期の主要工場は中国浙江省温州市に位置している
同地の温州製造基地(龍湾区空港新区)には本社ビルと大規模工場があり、2023年には中国工業情報化部の「グリーン工場」に認定されました
この温州基地を皮切りに、同社は近年生産拠点を全国に広げています
現在稼働・計画中の主な拠点は以下の通りです
温州基地(浙江省): 年産能力74GWh(2024年末時点の設計値)に達しており、今後も拡張予定です。2025年末までに温州工場の総生産能力を50GWhに拡大する計画があります
温州基地は最先端のデジタル化スマート工場として設計され、新世代のゼロカーボン工場モデル(スマートエネルギー管理+緑電活用)を採用しています
工場屋根に大規模太陽光発電(2023年発電量2822MWh)を設置し、さらにグリーン電力証書の購入により毎月1万MWhの再生可能電力を調達することで、温室効果ガスを年間約6.27万トン削減しています
またNMP溶媒の99.7%以上を回収再利用する装置を導入するなど、環境負荷低減と効率向上に努めています
嘉興基地(浙江省嘉善県): 上海に近い嘉興市嘉善に大規模工場を建設中で、2025年末までに77GWhの生産能力に拡張予定です
嘉興には同社のR&Dセンターの一つも所在し、セル開発から量産への橋渡しを担っています
この嘉興(瑞浦蘭鈞青創)工場では、前述のLMFP電池など新材料系の製造や次世代電池の試作ラインも整備される見込みです
仏山基地(広東省佛山市): 中国南部・珠江デルタ地域の拠点で、新工場を建設中です。計画生産能力は32GWhとされ、2024~2025年に順次稼働見込みです
広東はEV・蓄電需要ともに大きな市場であり、地元自動車メーカー(広汽など)や輸出産業への供給拠点となります
柳州基地(広西チワン族自治区柳州市): 中国西南部の拠点。柳州は五菱(Wuling)など小型EVや商用車メーカーの本拠地であり、同社は20GWh規模の工場建設を計画しています
五菱の電動ミニEVや商用EVへの電池供給強化を念頭に置いた戦略拠点です
重慶基地(重慶市): 中国内陸部・西南地区の中心都市で、30GWh規模の新工場設立を計画しています
重慶市は長安汽車など大手メーカーが集積し、また西南エリアの物流拠点でもあるため、乗用車・商用車の両方への電池供給を見込んでいます
2023年には重慶瑞浦蘭鈞子会社が設立されており、工場建設が進行中です
海外生産展開: 国内に加え、REPTは海外進出にも積極的です。2025年1月にはインドネシアでの電池工場建設に関する投資計画を発表しました
インドネシア現地法人PT Rept Battero Indonesiaに約1.395億ドルの増資を行い(出資比率60%を維持)、東南アジア初の海外生産拠点を構築します
同工場はニッケル資源の豊富なインドネシアでの拠点として、まず第一期として年産8GWhのEV・ESS電池およびパック組立能力で2025年以降に稼働開始予定です
インドネシア政府のEV推進政策(鉱物資源現地加工義務やEV産業育成)に対応し、東南アジア市場への供給拠点強化が狙いです
さらに欧州、南米への工場展開も視野に入れており、欧州市場を最重視しています
2022年末に提出した香港上場用目論見書では、ヨーロッパ・東南アジア・南米に生産拠点を設ける計画を明記しており、特に欧州では自動車メーカーのEVシフトに合わせて現地生産を検討中です
もっとも欧州では労務費や環境規制コストが高いため、製造コスト増と採算への影響を見極めながら「現地生産と輸出」のバランスを模索しています
米国市場については地政学的リスクを踏まえ慎重な姿勢を示しつつも、欧州については戦略的優先度が高く、現地政府の補助金やパートナーシップ獲得も視野に入れています
スマート工場化の取り組み
REPTの各工場は最新のデジタル製造技術を取り入れており、「数字ツイン」システムや高度なMES(製造実行システム)によるリアルタイム管理で生産効率と品質を高めている
単一工場あたり30GWh級の「スーパー工場」を目指し、従来比30%以上の空間効率向上を図ったレイアウトや、AIを活用した予知保全・工程最適化を進めています
品質面ではIATF 16949に準拠した600以上の工程管理ポイントを設定し、46段階の製造プロセス全体でトレーサビリティを確保しています
また六西格格(6 Sigma)やリーン生産方式を採り入れ、不良削減とコスト低減に努めています
グリーン工場認証の取得や省エネ設備(高効率HVACや廃熱利用)導入など、環境・効率両立型の次世代工場としてのモデル構築も各拠点で展開しています
これらスマート工場戦略により、大量生産時のスケールメリットを最大化しつつ、各電池セルの品質均一性と高安全性を担保しています
今後の拡張計画
上記の生産能力拡大により、REPTは2025年に総設備容量150GWh超を目指しています
もしこの計画通り実現すれば、年間約300万台分のEV電池を供給可能な規模となり、2022年実績で142GWhだったCATLの生産規模に匹敵する量です
この野心的な拡張計画は、市場での旺盛な需要見通しとIPO資金調達による設備投資余力を背景にしています
ただし拡張に伴うコスト増もあり、採算確保のため需要動向に合わせた慎重な増産が求められます
現在進行中のプロジェクトが完了すれば、中国国内では東部・華南・西南の各地域をカバーする生産ネットワークが構築され、海外でもアジアを皮切りに将来欧米への現地生産が可能となる基盤が整うことになります