EVE Energy(惠州億緯鋰能)詳細調査レポート: 特許・研究開発戦略(R&Dセンター、提携大学・企業、特許取得状況)

EVE_ENERGY惠州億緯鋰能
研究開発体制
EVEは強力なR&D体制を敷いています。恵州本社や荊門・東莞など主要拠点に研究センターを持ち、2021年には四川省成都市に大規模な電池研究開発センター設立を発表しました
この成都施設は製造拠点と一体化したR&Dセンターで、総投資200億元にも及ぶ計画です
人員面でも研究者・技術者を数千人規模で抱え、PhD取得者も多数在籍しています
またドイツや日本の技術顧問を招聘し、国際的な知見も取り入れており、EVEは2024年に組織改編を行い、研究体系を「基礎研究(前沿技術)」「製品開発」「工程技術開発」の三層に分け、新技術の迅速な製品化と量産適用を図っています

特許戦略
知的財産の蓄積にも余念がありません。2024年第一四半期だけで119件の電池関連特許を出願・公開しており、その内容は液冷プレート付き電池パックやセラミック複合セパレーター、積層電極の製造装置など多岐に渡ります
特許登録件数の全容は非公開ですが、中国国内の公開情報では累計6,300件以上の特許を出願済みとの報道があります(2024年時点)
中国政府の専利奨(特許賞)においてもEVEは5度目の表彰を受けており、技術革新企業として認知されています
特に電池安全や高エネルギー密度化に関する特許で優位性を築いており、米国のVarta社との特許係争でも攻勢に出ています(ボタン電池技術を巡りEVE側が特許無効審判を請求するなど)
また、国際標準化にも参画しており、IECやIEEEの標準策定に専門家を派遣しています

研究開発投資
2024年上半期のR&D費用は14.7億元で前年比16%増加し、売上高に対する比率も約6%に達しています
この投資は次世代大容量セル(628Ahセルなど)の開発や全固体電池の基礎研究、製造設備の自動化技術開発などに振り向けられました
EVEは「技術でリードする」戦略を掲げ、売上成長が鈍化した年でもR&D投資は拡大させています
これは短期利益より長期競争力向上を優先する経営姿勢を示すものです

産学連携・協業
EVEは大学・研究機関との連携も積極的です
広東省政府との協力で恵州にバッテリー技術の産学研ハブを構築し、高度専門人材の受け入れと地元サプライヤー育成を進めている
また中国科学院や清華大学のエネルギー研究所と新材料・新電池の共同研究プロジェクトを行っているとされています(正式発表はないものの、関係者インタビューで言及)
海外ではドイツのミュンスター大学電池研究センターなどと交流があり、日本の材料メーカーとの情報交換も報じられています
企業連携では、前述のとおり材料大手の山東瑞福(炭酸リチウム)に20%出資、ベーテル(BTR)系の負極材工場に40%出資するなど、上流分野の技術力・供給力確保にも努めています
さらにABB社とのMoU締結により、スマートでサステナブルな電池工場モデルの構築でも協働しており、生産技術面の革新も加速させている

まとめ
研究開発と特許はEVEの競争戦略の核となっている
グローバル特許ポートフォリオの拡充により模倣を防ぎつつ、JVを通じて自社技術を活用(米国Amplify JVではEVE技術のライセンス供与・ロイヤリティ収入も得る予定)するビジネスモデルも展開している
技術ロードマップとしては、短中期では高性能Li-ion電池の改良(エネルギー密度・安全性向上)、中長期ではNaイオン電池・全固体電池といったブレークスルー技術の実用化を見据えています
世界的な電池技術競争が激化する中、EVEは研究開発型企業としての強みを発揮し、先端技術と知財網で存在感を示しています