EVE Energy(惠州億緯鋰能)詳細調査レポート: 海外展開状況(工場所在地・生産能力・建設・拡張計画)
海外進出戦略
EVEは近年、海外市場への進出を加速している
2024年には北京・華南・華中・西南・東北・アジア太平洋・東南アジアの7地域統括本部を設立し、さらに年内に西北中国・米州・オセアニアの拠点も開設予定と発表しました
台湾台北には既に事務所を構えています
2024年9月には米国カリフォルニア州に米州本部を開設し、北米での事業展開を本格化させました
こうした組織面の整備と並行して、生産拠点のグローバル展開にも注力しています。
マレーシア(東南アジア): マレーシア・クダ州クリム(Kulim)にある工場は、EVE初の海外製造拠点です。2023年8月に着工し、2025年2月に初出荷を達成しました
投資額は約33億元(約4.54億ドル)で、敷地面積は26.9ヘクタールに及びます
生産品目は直径21mm・長さ70mmの円筒型21700セル(NMC系)で、電動工具や電動二輪車、掃除機などに使用されます
年産能力は6億8千万セル(約11GWh相当)にも達し、小型セル分野で世界最大級の規模です
同工場はEVEにとって第53番目の電池工場となり、海外1号拠点として社史に刻まれました
EVEはマレーシアをASEAN市場攻略のハブと位置付け、現地調達や地元人材育成も進めています
将来的には増設により2027年までに生産能力をさらに拡大する計画となっています
ハンガリー(欧州)
2023年10月、ハンガリー東部のデブレツェンに大型電池工場を建設する計画を発表しました
投資額は4,000億フォリント(約14億ドル)で、年間28GWhの生産能力を持つ予定です
製造するのは直径46mmの大型円筒型NMC電池で、BMWの次世代EV(Neue Klasse)に搭載されます
パックは800V動作で350kW急速充電対応となる高度なシステムであり、EVEはセル供給のみならずパック統合技術でも協働する見通しです
デブレツェン工場は2026年の稼働開始を目標としており、欧州におけるEVEの旗艦拠点となります
また同地域では中国の恩捷科技(Enjie)や星源材質(Senior)がセパレーター供給拠点を構える計画で、EVEは2024年11月に両社と欧州・東南アジア工場向けセパレーター長期購入契約を締結しています
少なくとも7年間で30億㎡以上のセパレーターを調達する契約で、これはハンガリー工場を含む海外生産に必要な材料を安定確保する狙いです
ハンガリー政府からも環境許可が下りており(2025年4月承認)、EVEは欧州生産立ち上げに万全を期しています
北米(米国)
北米市場では、先述のようにダイムラー・PACCAR・クミンズ(Accelera)との合弁会社「Amplify Cell Technologies (ACT)」を設立し、米ミシシッピ州マーシャル郡に年産21GWhの電池工場を建設中です
EVEは出資比率10%ながら技術ライセンス供与主体で、知的財産とノウハウを提供しています
製造するのは角型LFP電池で、北米合弁パートナー各社の商用EV(トラック・バス)に供給される予定です
2024年6月に起工し、2026年の量産開始を計画しています
このプロジェクトは米国のインフレ削減法(IRA)の恩恵も期待され、現地生産による税額控除や補助を得ることで競争力を確保します
また、EVEは2024年9月にカリフォルニア州に地域本部を構え、営業・技術サポート体制を整えていますようです
さらに2025年以降、米国内単独工場建設も視野に入れていると報じられており、現地政府との交渉を進めている模様です(具体的な場所は未公表)
北米市場でのプレゼンス拡大は、テスラへの供給契約獲得とも相まってEVEの最重要戦略となっている
その他地域
東南アジアでは、前述のマレーシア工場に加えタイにも進出計画があります
2023年7月、タイの大手再生エネルギー企業Energy Absoluteと合弁で少なくとも年産6GWhの電池工場を建設する覚書を締結しました
EVEが51%出資し、2025〜2026年の稼働を目指すとされている
このJVでは生産した電池を東南アジア市場に供給し、EVバスや太陽光蓄電用途を開拓する計画です
インドでも2024年2月、現地ESSメーカーGreenfuel社とのパートナーシップ締結が発表され、将来的なインド生産や組立工場の設立も視野に入れています
欧州ではドイツに研究拠点を持ち(EVE Germany子会社)、将来的に西欧での追加工場設立の可能性も示唆されています
また、日本市場にも蓄電システムを売り込み始めており、2025年には何らかの日本展開(代理店契約や現地法人設立)の動きがあるかもしれません
海外売上比率
こうした積極展開の結果、EVEの売上に占める海外向け比率は急伸しています
2024年には出荷量の60〜70%を海外需要が占める見通しとされ、実際2025年Q1には海外プロジェクト向けESS電池の伸長が大幅な増収に貢献しました
EVEは海外売上高比率をさらに高め、真のグローバル企業へ脱皮しつつあります
もっとも、海外進出に伴う政治リスクや貿易摩擦への対応も課題であり、各国の補助金政策を睨んだ拠点配置戦略が重要となっています