REPT BATTERO(瑞浦能源)詳細調査レポート:製品と技術(電池種類・性能・用途展開)

REPT BATTERO(瑞浦能源)詳細調査レポート
電池の種類
REPTの主力製品はリン酸鉄リチウム(LFP)電池と三元系リチウム電池(NCM系)となります
それぞれ自動車業界標準のVDA・MEBサイズの角型アルミ筐体セルとして供給されており、さらに新たに「BTL」大円柱型セル(いわゆる4680型に相当する大型円筒セル)も開発・提供しています
LFP電池はコストと安全性に優れ主にEVや定置型蓄電システム向けに、大容量NCM電池は高エネルギー密度を活かし航続距離重視のEV向けに展開しています
また2024年にはリン酸マンガン鉄リチウム(LMFP)電池の開発を完了し、エネルギー密度210~240Wh/kg、常温で3,000サイクル超の長寿命を実現したセルを国内外複数の顧客にサンプル出荷しました
LMFPはLFPにマンガンを添加して電圧を高めた新材料で、従来のLFPより高エネルギー密度・低コストかつ低温性能に優れ、NCM比でも安全性が高い利点があります
REPTはこのLMFPセルでコスト競争力と性能の両立を図り、市場投入を準備中です
技術性能(エネルギー密度・急速充電・安全性)
独自の「問頂(もんてい)®電池技術」と呼ぶセル構造革新により、内部空間効率を高めエネルギー密度を向上させているようです
LFPセルでは体積エネルギー密度450Wh/L、NCMセルで650Wh/Lを達成し、LFP搭載EVでの航続距離700km超、中ニッケルNCMで1000km、高ニッケルNCMで1200kmの航続を実現しました
重量エネルギー密度でも、最新の「問頂」シリーズLFP電池は180~200Wh/kgへ向上し、安全性も強化されています
NCM電池は超高速充電と高エネルギー密度の両方向を追求し、6C~8Cの超速充電に対応する製品(240Wh/kg級)を開発して顧客検証中であり、エネルギー密度300Wh/kgを超える高容量セルも開発して低空飛行体(eVTOL等)やロボット分野での応用を模索しています
「星系」電池技術と称するシリーズでは、高ニッケル材料でも安全性と性能の両立を図った「鎮星(ちんせい)」電池や、10分充電で400km走行(4C充電)を可能にする「辰星(しんせい)」電池ソリューションも発表しました
安全性に関しては高度な熱管理システムとAI監視を組み込んでおり、単一電池の熱暴走試験や大規模火災試験にも合格する高水準の安全設計を備えています
製造面では1つの生産ラインで年産10GWh超の出力を持つ高速自動化ライン(50ppmの角型セル組立速度)を構築し、6000以上の工程制御ポイントと1000超のAI検査による厳格な品質管理体制で安全性と歩留まりを確保しています
研究開発と次世代電池
REPTは将来技術として半固体電池と全固体電池の両面で研究開発を推進しています
2024年には第2世代半固体電池セルの開発に成功し、エネルギー密度310Wh/kg超を達成した角型セルを完成、既に自動車メーカーに搭載して実証テストを開始しました
電解質をゲル状にし高Ni正極・高Si負極材料と組み合わせた半固体技術で、液漏れリスク低減と高エネルギー密度の両立を図っています
また同年、全固体電池の試作にも着手し、固体電解質のイオン伝導度・界面安定性向上や製造プロセス研究を進めています
REPT主導の「長寿命・高エネルギー密度全固態リチウム電池プロジェクト」が2025年度の浙江省重点研究に採択されており、これにより開発が加速しています
同プロジェクトで試作される全固体セルはエネルギー密度400Wh/kg超を目標としており、将来的に乗用車やドローンなど新分野への適用が期待されています
このようにREPTは既存製品の改良(LMFP、快速充電)から新世代電池(全固体)まで幅広い技術ポートフォリオを構築し、国際特許は累計2,532件(うち発明特許222件)を保有するなど技術開発型の電池メーカーとして台頭しています
特に2024年単年だけで発明特許115件を含む741件の特許が新たに付与されており、固体電池関連でも既に4件の特許を取得済みです
こうした知財力は今後の技術優位性の裏付けとなっています
用途別展開
製品用途は電動モビリティ全般(EV乗用車・バス・トラック・特殊車両)、産業機械、船舶・航空、そして定置型エネルギー貯蔵と非常に広範で展開している
乗用車向けには長続きと安全性を両立した高性能セルと自社開発のBMSで航続距離・急速充電ニーズに応えています
ハイブリッド車(PHEV/EREV)向けにも高出力かつ耐久性に優れた電池で燃費向上と電動走行距離延伸に寄与します
超小型EVには小型・軽量セルでコストとエネルギー密度を両立するソリューションを提供しています
商用車(バス・トラック)向けには大容量「BIGPACK/BIGBANK」電池システムを展開し、1基あたり680kWh級の超大容量バッテリーを実装する技術も開発、電気バス・長距離トラックの要求にも応える耐久・安全性能を備えています
2024年には同社の大容量電池システムを搭載した電動重トラックの新型車が122モデルも型式認証され、市場投入されました
定置型蓄電システム向けには、液冷大型ラック型から住宅用まで幅広い電池モジュールを供給し、各国の再生可能エネルギー導入に貢献しています
特に同社の蓄電池は海外市場向け比率が高く、太陽光・風力のピークシフト用途で欧米に多く出荷されています
国内では電力価格差が小さいため需要が限定的ですが、海外では広範な需要に支えられ、REPTは2022年中国の蓄電システム用電池出荷量でCATL・BYDに次ぐ第3位となる8.8%の世界市場シェアを獲得
以上のように、複数分野に渡る用途展開と製品ポートフォリオの多様さがREPTの強みです