CATL(寧徳時代)の経営者情報2:主要幹部、経営方針
主要幹部の経歴と役割
CATLの経営陣には、創業者の曾氏を支える経験豊富な幹部が揃っています
まず鄭舒(ゼン・シュー)氏はCFO(最高財務責任者)を務め、2017年から財務責任者として上場準備や資本政策を指揮してきました
鄭氏は戦略的資金調達や投資案件を統括し、CATLの積極的な設備投資を財務面から支えています
技術部門トップには吳凱(ウー・カイ)氏が在籍し、主席科学者(チーフサイエンティスト)兼共同総裁という肩書で研究開発を牽引しています
博士号を持つ吳氏は元大学講師という異色の経歴で2012年にCATLに参加し、それ以来電池安全技術やセル・トゥ・パック(CTP)技術など数々の革新的開発を主導してきました
2023年には欧州特許庁の発明賞を受賞するなど国際的にも評価されており、CATLの技術競争力の源泉となっています
譚立斌(タン・リービン)氏はマーケティング・営業系の共同総裁(Chief Customer Officer兼市場体系総裁)で、国内外の自動車メーカーとの関係構築や受注拡大を担います
譚氏は特に海外顧客対応に精通し、欧米企業とのパートナーシップやグローバル営業戦略の最前線で活躍しています
加えて、CATLには用途別事業部門の責任者も存在し、例えば商用電池事業ユニット総裁の韓威氏などがそれぞれ専門領域を率いています
かつて副会長を務めた黄世霖(ホアン・シーリン)氏はATL時代からの共同創業者で、約11%の株式を保有する大株主でもありました
黄氏は長年技術・生産面を支えましたが2022年に経営実務を退き、新エネルギー関連の起業に転身しています
現在は曾氏と経営トップを務める周佳(ジョウ・ジア)氏がVice Chairman(副董事長)として社内ガバナンスに関与し、曾氏の片腕となっています
このように、CATLの幹部陣は技術・財務・営業それぞれのプロフェッショナルで構成されており、各自の専門性を活かして世界最大の電池メーカーの舵取りを行っています。
経営方針や戦略
CATLの経営戦略は、長期的視野に立った技術革新とグローバル展開の両立に重点があります
同社の長期ビジョンは「新エネルギー革命をリードし、持続可能な未来に貢献する」ことであり、具体的には電動モビリティとエネルギー貯蔵の分野で世界トップシェアを維持・拡大することを掲げています
曾CEOは自社の世界市場シェアを将来的に40%にまで高める意欲を示しており、そのために生産能力を飛躍的に拡大し続けています
近年は中国国内市場の成長鈍化と競合他社(BYDやCALBなど)の台頭に備え、グローバル市場開拓を最重要課題と位置付けました
2023年からは「海外に進出する者こそ社の英雄」とのスローガンを掲げ、欧州・北米・アジア各地での工場設立や顧客開拓に経営資源を集中投入しています
例えば欧州ではドイツやハンガリーに加えスペインへの投資を決め、北米では米フォード社との提携による現地生産で政治リスクの低減と補助金獲得を狙うなど、各地域に応じた戦略を展開しています
一方、技術開発方針としては多様な電池化学と次世代技術の先行開発が特徴です
CATLは三元系(ニッケル・コバルト・マンガン)とリン酸鉄リチウム(LFP)の双方で世界最高水準の製品ラインナップを揃え、用途に応じて使い分ける戦略を取っています
特にLFP技術では中国で培った低コスト・高安全性のノウハウを武器に、フォードへの技術供与やテスラへの供給を通じてグローバル標準に押し上げました
加えて、ナトリウムイオン電池など次世代電池の開発にも着手しており、新技術を積極的に市場投入する計画です。またライセンス供与戦略(LRSモデル)にも注目しています
これはCATLが培った生産技術を他社にライセンスし、生産設備構築や運営ノウハウも提供するビジネスモデルで、複数の自動車メーカーと協議中とされています
このモデルにより、自動車メーカーは自前で電池生産技術を迅速に習得でき、CATLは設備投資負担を軽減しつつ収益源を多様化できるため、双方にメリットがあります
経営方針として環境目標へのコミットメントも強調しており、カーボンニュートラル実現に向けた生産プロセスのグリーン化(工場での再生可能エネルギー活用やリサイクル推進)にも力を入れています
例えば広東省東莞市とはゼロカーボン先進工場の建設で協力し、循環型経済モデルの構築に取り組んでいます
さらにエネルギー貯蔵システム(定置型蓄電池)分野やEV用充電インフラ市場への進出も図り、「電池セル供給」だけでなくエネルギーソリューション全般を提供する企業への進化を目指しています
総じてCATLは、攻めの設備投資と技術革新を両輪として世界市場でのリーダーシップを維持し、サプライチェーン全体を視野に入れた包括的戦略を展開しています
その経営手法は「中国市場で築いた強固な堀を武器に、第2の成長エンジンとしてエネルギー貯蔵や海外市場を開拓する」ものと評価されており、同社は今後も業界を牽引する存在であり続けるでしょう