中国の主要リチウムイオン電池メーカー 2. BYD (比亜迪股份有限公司)
業概要: BYDは1995年に電池メーカーとして創業し、その後自動車事業に進出した中国広東省の企業です
現在では電池・自動車・太陽光・鉄道(モノレール)など4つの事業を展開する総合企業ですが、車載電池の分野でもCATLに次ぐ世界第2位につけています
2023年のEV用電池世界シェアは約16~17%と推定され(CATLと2社で世界シェアの半数以上)
中国国内では2024年に約24.7%のシェアで第2位となりました
BYDは自社でEV(乗用車・バス・トラック)を製造販売しており、これら自社NEV(新エネルギー車)の爆発的普及が電池事業拡大を後押ししています
主な製品: BYDの電池部門(ブランド名:FinDreams Battery)は主にEV・PHEV向けの車載電池を手掛けています。
特に有名なのが2020年に発表した独自設計の「ブレードバッテリー」で、LFP電池セルを長く薄いブレード状にしてパック全体の空間効率を高めた構造が特徴です
ブレードバッテリーはエネルギー密度の低さというLFPの弱点を克服しつつ、発火安全性も向上させたとされ、現在BYDの多くのEV(漢、唐、秦PLUS EVなど)に搭載されています
三元系(NCM)電池についてはBYDは以前からコバルトフリー化に注力しており、高ニッケル系の技術開発も進めています
用途別には、EV・PHEV向けが売上の大半ですが、エネルギー貯蔵システム(ESS)向けにもBYDは大型電池を提供しており、海外で大型蓄電プロジェクトに参入する例もあります
またBYDは電子機器向け電池事業(旧BYD電子、現在は独立会社)も持ち、スマートフォンやノートPC用のリチウム電池をアップルや中国スマホ各社に供給しています
主な顧客・提携先: BYDの車載電池は基本的に自社ブランド車両に搭載されています
同社は2022年に乗用車の純EVとPHEVを計186万辆(=186万台)販売し、世界最大の電動車メーカーとなりました
この垂直統合モデルにより、電池事業と車両事業の相乗効果でコスト競争力を高めています
ただし近年は外販にも積極的で、トヨタとはEV用電池の合弁事業(深圳比亜迪トヨタEV科技)を設立し、トヨタ向けにブレード電池を供給しています
またトヨタの中国向けEV「bZ3」にもBYDの電池が採用されています
さらにヒュンダイやTeslaにも電池供給の動きが報じられており、実際にTesla欧州工場の一部モデルにBYD製電池が搭載されたとの情報もあります(公式確認はないものの業界では有力視)
商用車分野ではBYD製電池搭載の電気バス・トラックが欧米各国の公共交通で採用されており、車両ごと電池を輸出する形でBYD電池が世界に広まっています
最近の動向: BYDは猛烈な勢いで事業拡大中です。2024年は年間販売台数300万台超が見込まれ、車両生産に追いつくため電池工場の増設を各地で進めています
技術面では、より薄型でエネルギー密度を高めた「Blade Battery」改良版や、ナトリウムイオン電池への取り組みも発表しました
また2023年、中国政府主導で結成された固体電池研究コンソーシアムにはCATLやCALBとともにBYDも参加しており、次世代全固体電池の開発でも中国メーカー連合の一翼を担っています
BYDの電池部門は将来の上場も取り沙汰されており、同社は「電池メーカーBYD」としてのプレゼンスも一段と高めつつあります