中国の主要リチウムイオン電池メーカー 5. EVE Energy (惠州億緯鋰能)
市場ポジション・概要: EVE Energy(億緯鋰能)は2001年に中国広東省恵州市で設立された電池メーカーです
当初は小型リチウム電池(一次電池や携帯機器向け)を手掛けて成長し、その後車載・産業用の大型電池に事業を拡大しました
現在では消費者用電池から車載用電池まで幅広く扱う総合電池企業であり、EV用電池の世界シェアは約1.6%(2023年、世界9位)に達しています
中国国内でも2024年装車量で第5位に入るなど上位グループの一角となっています
特に近年、新興EVメーカーへの採用やエネルギー貯蔵向け電池需要の増加により急成長を遂げており、2023年1~10月には前年比128%増の11.7GWhを出荷しています
主な製品・用途: EVEは多様なフォーマットのリチウムイオン電池を生産しています
車載向けには、円筒型セル(例えば径46mmの大型円筒セルや、電動工具向け18650/21700セルなど)、角型セル(主にリン酸鉄リチウム)およびラミネート型(パウチ型)セルを供給しています
円筒型セルについては高出力・高エネルギー密度が評価され、電動工具や電動二輪、さらには高級EV向け次世代セルとして注目されています
角型LFPセルは商用車や定置型ストレージ向けに大量出荷されています。小型分野では、**一次電池(リチウム電池)**やIoT機器用のコイン電池、電子タバコ向け電池などもEVEの主要製品です
用途別に見ると、乗用車EV向けは同社売上の約半分程度ですが、残りはエネルギー貯蔵システム向け(大型LFP電池モジュールを提供)や消費者電子機器向けが占めます。特にエネルギー貯蔵電池では海外需要の取り込みに成功し、2024年上期に前年同期比2倍以上の出荷成長を記録しました
主な顧客・提携先: EVEの顧客基盤は広範です
車載電池の分野では、Mercedes-BenzやBMWといった国際的自動車メーカーのサプライチェーンに入りつつあり、両社とパートナーシップを結んで次世代EV向け電池セルの供給を計画しています
たとえばBMWは2025年以降の新型EVプラットフォーム向けにEVE製大型円筒セルを採用予定です
また中国国内では、小鵬汽車(XPeng)のEVや重慶金康(SERES)の車両、商用車では三一重工の電動ダンプトラックなどにEVE製電池が使われています
エネルギー貯蔵分野では、Tesla Energy(Megapack用電池の一部を供給との報道)、米国Fluence社、国内の華為(Huawei)の蓄電製品向けなど名だたる企業がEVEのセルを採用しています
この他、電子タバコ最大手のJuulや各種IoT機器メーカーなども小型セルの主要顧客です
最近の動向: EVEはここ数年で大型投資を相次いで行っています。国内では湖北省や広東省恵州に大規模工場を建設し生産能力を急拡大中です
海外でも、マレーシアに車載電池工場を建設(2024年稼働)し、欧州や北米にも生産拠点設置を検討しています。また2023年にはグローバル展開を強化するため北米・欧州など7地域に現地法人を設立し、海外顧客との関係強化に乗り出しました
技術面では、エネルギー貯蔵向け超大型セル(600Ah級)の開発や全固体電池技術にも注力していると発表しています
急成長に伴う資金需要に対応すべく、増資や社債発行も活発に行われています。こうした動きにより、EVEは「総合電池メーカー」としてCATL・BYDに次ぐ地位を狙う存在となっています