中国の主要リチウムイオン電池メーカー 6. 蜂巣能源 (SVOLT Energy Technology)
市場ポジション・概要: 蜂巣能源(SVOLTエナジー)は、中国の自動車メーカー長城汽車(グレートウォール)から2018年に独立した電池メーカーです
親会社の長城汽車がEV/ハイブリッド車向け電池を内製化する目的で分社化した経緯があり、設立から日が浅いものの大手自動車グループの支援で急速に事業を拡大しています
2023年現在、中国国内の車載電池装車量ランキングで第6位に入る規模になりました
世界シェアでは1~2%程度と推定されますが、今後の成長が期待される新興企業です
主な製品・用途: 蜂巣能源の特徴はコバルトフリー電池の先駆者であることです
2020年に世界で初めて量産型のコバルトを含まない三元系(NMX)電池を発表し、大きな注目を集めました
NMX電池はニッケルとマンガン主体でエネルギー密度を確保しつつ、コバルト使用によるコスト増や供給リスクを低減する試みです
現在はNMXだけでなく従来型のNCM電池やLFP電池も製品ラインナップに揃え、乗用車から商用車、さらにエネルギー貯蔵向けまで電池を提供しています
特に高級車・高性能EV向けには高ニッケルNCM/NMXセルを、普及車向けにはLFPセルを展開する戦略です
また電池パックのシステム開発にも力を入れ、モジュール一体化設計などCATLに似たアプローチも追求しています
主用途は乗用車向けですが、一部商用車やバス向けプロジェクトも手掛け始めています
主な顧客・提携先: 蜂巣能源の最も重要な顧客は、母体である長城汽車(GWM)です
長城汽車のEVブランド「欧拉(ORA)」の電気自動車や、ハイブリッドSUVモデルなどにSVOLT製電池が搭載されています
また他の中国メーカーでは四川汽車や広汽の一部EVモデルでも採用例があります
国際的には、欧州自動車大手のStellantis(プジョー・Jeepなどを擁するグループ)がSVOLTと提携を結び、2025年以降同社に電池を供給する契約を発表しました
これに伴いSVOLTは欧州に電池工場建設を計画し、最大5か所・計約20GWh以上の生産能力を設ける構想を打ち出しています
さらに報道によれば、BMWから約100億ドル相当の電池受注を獲得したとも伝えられ、今後ドイツメーカーへの供給も見込まれます(※正式発表はなく、市場観測)
このように国外メーカーからの引き合いが増えており、SVOLTはグローバルサプライヤーの地位を狙っています
最近の動向: SVOLTは成長段階にあり、生産能力の拡充と資金調達が課題となっています
中国国内では河北省・江西省などに複数のギガファクトリーを建設中で、2023年時点の総生産能力は60GWh前後に達しました
欧州では当初ドイツに大型工場建設を計画していましたが、2023年に一旦計画を見直し(資金調達環境の変化による)
代わりに複数の中規模工場分散案を検討しています
技術面では固体電池や半固体電池の研究にも取り組んでおり、中国政府系の固体電池連合プロジェクトにも名を連ねました
また2022年には科創板(中国版ナスダック)へのIPO申請を行い資金調達を図っています。今後、親会社の長城汽車以外への販売拡大と財務基盤強化が成長の鍵となるでしょう