中国の主要リチウムイオン電池メーカー 9. 正力新能 (Zhengli New Energy / Tafel New Energy)
市場ポジション・概要: 正力新能(Zhengli New Energy)は、中国江蘇省に拠点を置く新興電池メーカーです
設立は2016年で、比較的新しい企業ですが、車載電池市場で急伸しつつあります
製品ラインナップは動力用電池(EV・HEV向け)とエネルギー貯蔵用電池、さらには一部航空機用電池までカバーしています
2023年には中国国内の動力電池装車量ランキングで第10位前後に入る規模となり、市場シェア約1~2%を占めました
特に三元系電池の分野で存在感を示し、一部の統計では2023年前半の国内三元系電池出荷量で第7~8位、総合で第10位に位置付けられています
主な製品・用途: 正力新能は三元系(NCM)リチウムイオン電池とリン酸鉄リチウム(LFP)電池の両方を製造しています
乗用車EV向けには高ニッケルNCMセルを提供し、高性能EVの航続距離向上に貢献しています。一方、低コストのLFPセルも手掛け、バランスの取れた製品ポートフォリオを構築しています
ユニークな製品として、航空機向け電池にも取り組んでおり、小型電動飛行機やドローン向けの高出力電池開発も行っています
用途別では、メインは乗用車EVおよび商用車向け動力電池です
特に中国新興EVメーカーの量産車に採用が進んでいます
またエネルギー貯蔵用途にも一部参入しており、中小規模の蓄電システム向け電池を供給しています
主な顧客・提携先: 正力新能の顧客には、新興EVメーカーや中国国産車メーカーが含まれます
具体的には零跑汽車(Leapmotor)や哪吒汽車(Hozon)といった新興EVブランドに電池を供給し、それらの量産車に搭載されています
また一汽紅旗(高級車ブランド紅旗のEV)や広汽伝祺の一部プラグインハイブリッド車など、大手メーカーの特定モデルへの採用例もあります
このように「造車新勢力」と呼ばれる比較的新しい自動車メーカーへの販路を拡大することで成長してきました
提携面では、2023年に塔菲爾新能源(Tafel)との戦略的協力を発表し、技術・市場で協調しています(業界では正力新能とTafelは関連企業とみなされることもあります)
現在IPOを目指して資本調達中であり、それに伴いさらなる大手自動車メーカーとの取引拡大が期待されています
最近の動向: 正力新能は2023年に入り新型電池の発表や技術イベント参加で存在感を示しています
2023年4月には、エネルギー密度と安全性を両立した「騏龍」と名付けた大円柱型電池(170kWh超の超長航続パック用)を発表し、半固体電解質採用による高い安全性をアピールしました
業績面では設立以来赤字が続いていますが(直近3年で累計27億元以上の損失)
積極的な研究開発投資と設備投資を続けています。香港市場への上場を目指しており、調達資金で生産能力の拡充と負債改善を図る計画です
市場ではSunwoda・REPTと並ぶ「電池業界の新鋭」として注目されており、今後のシェア争いで台風の目となる可能性があります