CATL(寧徳時代)用途別の展開(EV・ESS・産業用途など)
電気自動車(EV)
CATLは電気自動車向け電池で世界シェア1位を占めており、乗用車から商用車まで幅広いEVに電池を供給しています
2024年上旬時点でCATLは世界のEV用バッテリー市場の約37.7%を占有し2位のBYD(約15%)に大差をつけています
CATLの顧客にはテスラ、BMW、フォルクスワーゲン、メルセデス・ベンツなど世界有数の自動車メーカーが名を連ねており、テスラModel 3/Y(中国生産モデル)やBMW iX、メルセデスEQシリーズ、VW IDシリーズなどの主要EVに搭載されています
特にテスラの標準レンジモデルにはCATL製LFP電池が採用され、コスト削減と充電80%までを日常使いする運用との相性の良さで貢献しています
また中国市場の多くのEV(NIOや蔚来、自動車大手の一汽・広汽系EVなど)にもCATL電池が使われ、CATL無しでは中国EV市場は成り立たないと言われるほどです
商用車ではバスやトラック向けに大型電池システムを供給し、例えば電動バス大手の宇通客車などとも提携してきました
最近では大型トラック向けの電池交換(バッテリースワップ)システム「QIJI」を発表するなど、商用EV向けソリューションにも力を入れています
以上のようにCATLの電池は乗用車から商用車までEV用途全般で圧倒的な存在感を持っています
エネルギー貯蔵システム(ESS)
CATLは定置型のエネルギー貯蔵システム(Battery Energy Storage System, BESS)分野でも世界トップクラスです
太陽光・風力など再生可能エネルギーの導入拡大に伴い、大容量蓄電池によるグリッド調整や企業・家庭用蓄電の需要が高まっています
CATLは2018年以降、大型リチウム電池によるメガワット時規模の蓄電プロジェクトに参画し、2020年代前半には世界のBESS市場で3年連続出荷シェア世界一となっています
例えば英国ではヨーロッパ最大級の電力系統用蓄電施設「Minetyプロジェクト(容量約220MWh)」にCATLの電池が採用され、米国テキサスでも220MWhの大型蓄電所にCATL電池が使われるなど、世界各地で実績があります
ESS用途では安全性・寿命・コストが特に重視されるため、コバルトフリーで長寿命なLFP電池が主力となっており、CATLのLFP技術が強みを発揮しています
また前述のナトリウムイオン電池もリチウム資源逼迫に備えた定置型向けソリューションとして期待され、中国の電力会社が一部実証導入を始めています
CATLは蓄電システム用のパワーコンディショナやエネルギー管理システム(EMS)も含めた統合ソリューションを提供しており、単なる電池セル供給に留まらないバリューチェーン構築を進めています
産業・その他用途
CATLの電池技術は産業用途や小型モビリティ、電子機器にも応用されています
産業機械ではフォークリフトや鉱山車両、建設機械の電動化にCATLの電池が採用例があります
特にフォークリフトの分野では鉛蓄電池からリチウム電池への置き換えが進み、メンテナンスフリーで長寿命なCATL製LFPバッテリーが使われています
また、鉄道の補助電源や港湾のAGV(無人搬送車)など業務用途にも実績があります
二輪車や低速EV(電動スクーター、自転車、コミューターカー)向けにもCATLはバッテリーパックを提供しており、ホンダやヤマハといったメーカーとも提携しています
小型電子機器向けについては、CATLは元々ノートPCやスマートフォン向け電池事業(ATL社)から派生した企業ですが、現在のCATL本体は大型電池に注力しているため、スマホやPC用電池は主にATLなど別会社が担っています
ただしエネルギー密度の高い電池技術や量産ノウハウは共有されており、CATLの研究開発は幅広い電池分野に影響を与えています。