CALB(中创新航科技)の企業概要:経営者情報
CALBの経営陣は、電池業界のみならず幅広い製造業での経験を持つメンバーで構成されています
創業は2007年、中国航空工業集団(AVIC)系列の一部門としてスタートした経緯があり、社名の「China Aviation Lithium Battery」もその出自を示しています
現在の董事長(会長)兼CEOを務めるのは劉静瑜(Liu Jingyu)氏で、2018年にトップに就任しました
劉氏は液晶ディスプレイ大手の天馬微電子(Tianma Microelectronics)で取締役兼総経理を歴任し、15年以上にわたり国際的な事業運営を手掛けた経歴を持ちます
その実績が評価され、CALBでは全社戦略の立案・実行を統括し、大型資金調達(2022年の香港IPOでは約12.6億ドルを調達)や海外進出を陣頭指揮しています
劉CEOは「2027年までに世界トップ3の電池メーカーに」というビジョンを掲げ、積極的な研究投資とグローバル展開を推進しています
技術面を率いるのはCTO(最高技術責任者)の潘芳芳(Pan Fangfang)博士です
2015年にCALBに加わった潘氏は、2019年にCTOに就任して以来、R&D戦略・知的財産・品質管理を統括しています
潘博士自身、電池材料や設計の専門家であり、洛陽拠点での電池設計ディレクターやプロジェクト主任技師を務めた経験があります
彼女の下でCALBは技術革新を重視し、前述のOSプラットフォームやU型セルなど先端技術を次々に市場投入しています
また知財戦略にも注力し、約3800件の特許ポートフォリオを構築するなど、技術と特許で競争力を高める方針です
営業・市場戦略を担うキーパーソンとしては、謝秋(Xie Qiu)副総裁が挙げられます
謝氏は車載電池製品の営業・開発を率いており、中国内の完成車メーカー各社とのリレーション強化や、新規モデルへの提案活動を主導しています
2024年の販売実績を見ると謝氏の尽力もあり国内大手・新興各社への採用が広がりました
また財務面では高艶(Gao Yan)氏が副総裁兼財務総監として資金管理・人事を統括し、投資回収と内部効率向上に努めています
この他、生産担当の王小強副総裁や、設備建設担当の何凡副総裁など、各機能部署のトップが経営陣に名を連ね、劉CEOのもとチーム体制で事業拡大を進めています
経営陣には前職で天馬微電子に在籍したメンバーも多く、ハイテク製造業で培った規模生産のノウハウや品質管理手法をバッテリー業界に応用している点も特徴的です
経営戦略の面では、CALBは「長期主義」を掲げつつ現実的な市場対応にも努めています
最大手2社に次ぐ「業界第3位」の地位を守り抜くことが当面の目標であり、そのために価格競争だけでなく技術力とサービスで付加価値を提供することを強調しています
もっとも黎明期からCALBを支えた低価格路線は今なお重要な武器であり、市場シェア拡大のため柔軟な価格設定も辞さない姿勢です
大口顧客戦略では、同社売上の約3割を占めてきた広汽(GAC)グループとの関係維持・深化が課題です
GACは自社でバッテリー子会社「因湃電池」を設立し2023年末から生産を開始したため、CALBにとっては主要顧客を自前競合に奪われるリスクとなっています
実際、2022年にGACの電池自製化が発表されるとCALB株価が急落し、IPO時の時価総額水準に戻れていないという苦い経験もあります
こうした逆風に対し、他の自動車メーカーへの販路多角化や海外開拓でリスク分散を図る戦略です
前述のようにトヨタ等の国際OEMからノミネーション獲得に成功したのもその一環と言えます
最後にESG(環境・社会・ガバナンス)への取り組みです。CALBは2022年にESG管理体制を強化し、取締役会をESG推進の最高責任機関に位置付けました
取締役会の監査委員会がESG施策の統括を担い、社員への教育や目標設定を行っています
環境面では製造時のCO2排出削減やリサイクルに注力し、前述のポルトガル工場のような再エネ活用型工場を計画するなどカーボンニュートラルに向けたロードマップを描いています
社会面では地域経済への投資や雇用創出、サプライチェーン上の労働環境配慮などを推進し、社内でも多様性と人材育成に注力しています
ガバナンス面では国有企業的な色彩を残しつつも国際資本を受け入れた企業として、社外取締役の起用や情報開示の強化を進めています
総合的に見て、CALBは急成長する産業の中で持続可能性と競争力を両立すべく、経営基盤の強化とステークホルダー価値の向上に取り組んでいると言えるでしょう