CALB(中创新航科技)の概要:経営状態と製品ラインナップ

経営状態
CALB(中创新航科技、香港株式コード: 3931)は、中国の大手電池メーカーで、近年売上は堅調に推移しつつ利益率に課題を抱えています
2024年の通期売上高は約2,775億円(277.5億元、前年比+2.8%)でわずかな増収となり、純利益は8.43億元と前年の4.37億元から約93%増加しました

この大幅な増益は、原材料価格安定や規模拡大によるコスト改善によるものです
一方で売上高純利益率は約3%程度にとどまり、依然として低水準です。また営業利益は12億元(前年比+57%)と増加し、粗利益率も15.9%へと約3ポイント改善
しかし、CALBの成長率は鈍化傾向にあります。特に2023年は売上高270億元(前年比+32.5%)に対し純利益2.94億元(-57.4%)と「増収減益」に陥りました
背景にはEV向け電池価格の下落や主要顧客の動向がありました。実際、EV用電池事業の2024年売上は195.5億元で前年比▲12.1%と減収となっています

これは販売量は伸びたものの価格競争で単価が下がったためです
一方、エネルギー貯蔵システム(ESS)向け事業は82.0億元と前年の47.6億元から+72.4%の急成長を遂げ、売上構成比も17.6%から29.6%へ拡大しました
ESS分野の好調がEV電池事業の伸び悩みを補っています
財務面では積極的な設備投資が続いており負債が増加しています
2024年末時点の借入総額は約461.16億元(約\tiny$9.0,$兆\tiny円)で、前年末の291.71億元から大幅に増加しました

特に1年内返済の短期借入が189.6億元あり、残りは長期借入です
一方で現金及び預金残高も124.36億元(前年末92.16億元)に増え、IPOや融資で得た資金を背景に積極的な拡張戦略を取っていることがうかがえます
総じてCALBは売上規模拡大とともに利益体質の改善途上にあり、成長投資による財務負担とのバランスが経営課題となっています

製品概要(電池関連)電池製品ラインナップと技術
CALBは主にリチウムイオン電池を製造しており、リン酸鉄リチウム(LFP)電池とニッケルコバルトマンガン(三元系NCM)電池を二本柱としています
製品形状はプリズマティック(角形)セルが中心ですが、一部円筒形セルの開発も行っています
特筆すべき自社技術として「One-Stop (OS)」電池プラットフォームを導入しており、材料設計から構造・生産工程まで統合的に最適化することで、電池パックレベルでの高効率・高密度化を実現しました

OSプラットフォームはLFPおよび三元系の両方に対応し、A00級小型EVからC級大型車まで航続200~1000kmのあらゆる車両に適用可能な柔軟性を備えています
このアプローチはCATLのキリン電池やBYDのブレード電池と同様に、セルを直接パックに組み込む「CTP(Cell-to-Pack)」構造でエネルギー密度を高めたものです

実際にCALBのOS採用電池パックはLFP系でエネルギー密度153Wh/kgを達成し、広汽埃安(GAC Aion)のハイパーGTに搭載されました
さらに高速充電や高エネルギー密度を狙った新技術として、CALBは「U型構造」円筒電池を発表しました。従来のタブレス(Tabless)4680型電池の概念を発展させ、内部集電構造をU字形に再設計することで、セル内部の電流経路を短縮し抵抗を低減しています

このU構造電池では製造ラインの溶接工程を70%削減でき、結果としてNCM系セルで300Wh/kg、LFP系でも200Wh/kgという高い重量エネルギー密度を実現しています

また内部抵抗低減による発熱抑制により6C高速充電(10分で満充電)を可能にするとされます
このようにCALBはパック構造からセル内部構造まで幅広い技術革新で性能向上を図っています

次世代電池技術への取り組みも行われています
ナトリウムイオン電池については研究開発を進めており、2023年9月には「一种钠离子电池」という新型ナトリウム電池の特許を出願・取得しました

ナトリウム電池はコストや資源面で有望視されますが、CALB経営陣によればあくまでリチウムイオン電池を補完する位置づけで、短期的にリチウム電池を凌駕する性能・コスト優位性を得るのは難しいと見ています

現時点で商用化プロジェクトは開始しておらず、研究段階に留まっています
また全固体電池(固体電解質電池)についても社内の実験室レベルでは開発を進めており、業界トップクラスの指標を示す成果を持つとしていますが、大量生産にはサプライチェーン全体の整備が必要で実用化までまだ距離があると述べています
CALBはこうした将来技術も視野に入れつつ、当面は従来型リチウムイオン電池(液系)の改良・革新による性能向上路線を堅持する方針です