SVOLT Energy Technology(蜂巣能源)詳細調査レポート: 工場の概要

SVOLT Energy Technology調査レポート
蜂巢能源は、中国国内各地および海外に多数の生産拠点を構築している
2023年時点で世界12ヶ所の生産基地と9ヶ所の研究開発センターを有するとされています
主要工場の所在地、規模、および計画は以下の通りです

中国国内の生産拠点
常州(江蘇省): 本社所在地であり、2019年に車載向けAIスマート電池工場が立ち上げられた最初の拠点です
正確な年産能力は非公開ですが、同社初の商用生産ラインとして主に長城汽車向け電池の生産を開始しました
常州は技術開発センターも併設しており、人員・設備とも集中している

遂寧(四川省): 2021年1月に遂寧市と年産20GWhの動力電池工場建設契約を締結しました
これは同社が中西部へ展開した最初の大型プロジェクトで、2022年頃より稼働開始と推定されます

湖州(浙江省): 2021年2月に年産20GWh規模の新工場建設に70億元投資する契約を締結
x湖州南太湖新区に755ムー(約50ha)の用地で建設され、2023年末時点で稼働準備中です
この湖州計画により、SVOLTの総計画生産能力は当初見込みの100GWhから**200GWhへ上方修正(2025年まで)されました

盐城(江蘇省): 江蘇省盐城市にも拠点を持ち、2022年には塩城工場第2期の積層生産ラインが稼働開始しています
第1期と合わせた規模は不明ですが、他拠点に倣えば十数GWh級と推測されます

泰州(江蘇省): 盐城と同じ江蘇省内で、モジュール/パック組立などの拠点を有します(詳細規模非公開)

南京(江蘇省): 2021年に建設契約締結
研究開発機能も併設した基地で、将来数十GWh規模に拡張予定

馬鞍山(安徽省): 2021年に安徽省で28GWh規模の新基地建設を発表しました
総投資額110億元、敷地1000ムー超で、電池セルからPACKまで一貫生産する予定です
2023年時点で建設が進行中または一部稼働開始とみられます

上饒(江西省): 長江中游地域の上饒市にも生産基地を開設済み
規模は公表されていませんが、地域需要に応じた供給拠点です

成都(四川省): 成都東部新区に大型リチウム電池産業園を建設中です
総投資額は220億元、二期構成で一期31.5GWhの産能を持ち、2023年に一部投産しました
同基地は蜂巢能源にとって西部最大拠点となり、将来さらなる増強も計画されています
2023年には成都基地において325Ah大型短刀セル(主にエネルギー貯蔵向け)の量産第1号が立ち上がっています
また成都基地では金融機関との間で75億元のシ団ローン契約を締結し、資金面も手当てされています

達州(四川省): 2022年末着工した達州リチウム電池ゼロカーボン産業園は、材料から電池組立まで統合した先進工場です
総投資額170億元、三期構成で、三期には30GWhの動力電池組立ラインを予定しています
1期では年産15万トンのLFP正極と7万トンの無コバルト正極の製造設備、2期では前駆体や電解液、リサイクルラインを構築し、原材料からセルまで一貫した供給網を目指しています
2023年12月27日に達州工場の稼働式典が行われ、全面稼働後は年商630億元規模を見込みます

保定(河北省): 創業母体の長城汽車本拠地である河北省保定市にも、小規模ながらバッテリー生産拠点(保定北部工場)を保有しています
ここでは初期に長城向けパック等が製造され、現在は主に試作・検証ラインとして機能していると考えられます

以上のように、中国国内では華東(長三角)から西部(四川・西安方面)まで合計10ヶ所以上の工場を展開し、2025年までに総計画産能200GWh超を目指しています
これはCATLやBYDと比べれば依然規模は小さいものの、創業から数年で達成する計画としては極めて野心的です

海外の生産拠点
タイ(チョンブリ県シラチャ): 東南アジア初の海外工場として、タイのモジュール/PACK工場を2023年7月に着工し、同年末に建設完了しました
投資額は約3000万ドルで、既存施設の改修により年産6万個のモジュール/パック(推定3.5–4GWh相当)の能力を有します
2023年12月には初号となるLFPパック(60kWh・短刀L600セル採用・航続500km以上)が下線し、グレートウォールの「オラ好猫(Good Cat)タイ仕様」に搭載されました
タイ工場は蜂巢能源のタイ法人(SVOLT Thailand)と現地大手エネルギー企業Banpuの合弁的スキームで運営され、今後タイ市場のEV(長城汽車やHozonの現地生産車)およびASEAN地域への供給拠点となります

ドイツ(ザールランド州): SVOLTは2020年に欧州進出計画を発表し、ドイツ・ザール州にセル工場(ユーバーヘルン)とモジュール/PACK工場(ホイスヴァイラー)の2拠点を建設予定としていました
計画では合計40GWh(セル16GWh+パック24GWh)規模で、約20億ユーロを投資し2023~2025年にかけ稼働開始を目指していました
しかし欧州EV市場の伸び悩みや地政学的リスクを背景に、2024年10月にこれらドイツ工場計画を中止し、2025年1月までに欧州事業を撤退する決定を公表しました
一部設置済みの設備もあった中での撤退で、BMWとの非公式な契約の噂もありましたが正式受注は得られず、欧州市場環境の変化に対応した戦略転換となった
この結果、ドイツに設置予定だったR&Dセンターも閉鎖される見通しです

フィンランド(計画段階): 2023年にはフィンランドに年産50GWh級の大型電池工場建設を検討しているとの報道もありました
しかし上記ドイツ撤退の文脈から、この計画も凍結または再考されている可能性があります

今後、蜂巢能源は海外展開方針を転換し、「輸出と協業」による市場参入を図るとみられます
例えばタイ工場のように需要地でのモジュール組立や、大手OEMとの提携で供給するモデルです
一方、中国国内では引き続き新工場建設が計画されており、2025年には中国内だけで10拠点以上・合計200GWh超のキャパシティに達する見込みです
これにより、需要拡大に対応しつつ各地域(華北・華東・華中・西南)への安定供給体制を築いています