SVOLT Energy Technology(蜂巣能源)詳細調査レポート: 経営者情報

SVOLT Energy Technology調査レポート
蜂巢能源の経営陣は、創業母体である長城汽車からの出身者と専門投資家によって構成されている
創業者であり実質的な筆頭株主は、長城汽車の創業者として中国自動車業界を代表する企業家である魏建軍氏です
魏氏は蜂巢能源の株式を直接・間接に約40.26%保有し、議決権ベースでは約76.8%を握る実質支配株主となっています

長城汽車本体は直接株主ではありませんが、親会社である長城控股などを通じて出資しています
もっとも、2023年9月のメディア報道で取り沙汰された「長城汽車がSVOLT株式をCATLに売却検討」との噂に対して、経営陣は「長城は主要株主だが売却予定はない」と否定し、資本関係の安定性を強調しました

CEO(最高経営責任者)兼会長 楊紅新(ヤン・ホンシン)氏
楊氏は2012年に長城汽車内で電池プロジェクトチームを立ち上げ、2018年の蜂巢能源分社化以来、同社を率いてきた人物です
電池技術の専門家であり、蜂巢能源の技術ロードマップ(無コバルト電池、高速叠片技術、龍鱗甲電池など)の陣頭指揮を執っています
彼のリーダーシップの下、蜂巢能源は「技術革新駆動の成長」を掲げ、売上の約20%前後を研究開発に投入し続けています
楊紅新CEOは戦略として「パワーバッテリーとストレージ(蓄電)の両輪駆動」を強調しており、自動車向け電池のみならずエネルギー貯蔵向け製品の拡充にも注力する方針です
また、国際化についても積極姿勢を示しており、欧州や東南アジアでの展開計画を打ち出してきました(結果的に欧州撤退という判断も迅速に下しましたが)
楊氏は「革新によってグローバルエネルギー変革に貢献する企業になる」とのビジョンを掲げており、起業家精神と技術者気質を併せ持つトップです
取締役会には、魏建軍氏(長城汽車創業者)や楊紅新氏の他、王志坤氏、馬李勇氏、杜朔氏、彭雪梅氏など数名の取締役が名を連ねています
このうち王志坤氏は社内取締役でIR担当、その他は長城グループ関係者およびシリーズB以降の出資家代表とみられます
さらに独立董事(社外取締役)として黄学杰氏(電池科学の著名な専門家)や胡為暘氏らが参画し、専門的見地から経営を監督しています

黄学杰氏は中国科学院のバッテリー研究権威であり、技術面での助言を行っています
経営戦略としては、以下のポイントが特徴的です

技術先行・研究開発重視
前述の通り、売上に対するR&D投資率が20%前後と高水準で、製品差別化を図っています
短刀電池や無コバルト電池など、競合より一歩踏み込んだ技術投入で市場を開拓する方針です

積極的な資本政策
2018年の設立以降、短期間で7回の増資(シリーズA~B+等)を実施し計200億元近い資金を調達しました
2022年には科創板IPO申請に踏み切り150億元の調達計画を立てましたが、2023年末に撤回しています
今後はプライベートファイナンスや戦略投資誘致で資金ニーズに応える構えです

顧客関係と市場開拓
長城汽車から独立した企業文化を育む一方で、長城との協業関係は維持しています
また新興EVメーカーへの営業を強化し、多角的な顧客ポートフォリオ構築を図っています
欧州OEMとも対話を続け、将来的な受注機会を窺っています

グローバル視点
中国国内市場での地歩を固めつつ、「Green Energy Everywhere(世界中にグリーンエネルギーを)」とのミッションを掲げ海外にも目を向けています
もっとも現時点では収益の大半が中国国内からであり、当面は国内市場シェア向上に主眼を置くとみられます
以上のように、蜂巢能源の経営陣は長城系の安定した支援と技術志向のリーダーシップによって構成され、急拡大する企業を牽引しています
今後のIPO再挑戦や更なる国際展開も、楊CEOを中心に状況を見極めながら機動的に進めていくと考えられます