BYD(比亜迪股份有限公司)の製品概要(今後の展開と競合比較)
■ 用途別の展開:
BYDは電池を自社完成車のみならず多様な分野に展開している
乗用車EV分野では、BYD Autoブランドでセダン・SUVから高級ブランド(仰望=Yangwang)まで展開し、その全てに自社電池を搭載する(2022年以降は純ガソリン車ゼロ)戦略を採っている
特にブレードバッテリー採用のEVは安全性を武器に海外市場でも評価が高く、テスラを含む他社にも同電池を供給している(テスラ「モデルY」標準版向けLFP電池など)
商用車(バス・トラック)分野でも世界最大手であり、世界各地の公共交通向け電動バスにBYD製電池・車両が採用されている
例えばロンドンやロサンゼルスの電動バスはBYD製が多数運行中
エネルギー貯蔵システム(ESS)分野では、住宅・産業用蓄電池「Battery-Box」シリーズや、大規模グリッド用のコンテナ型蓄電システムをグローバルに供給している
前述のナトリウムイオン蓄電システムの投入もその一環であり、再生可能エネルギーの安定化用途でBYD電池の需要が拡大している
産業用途では、フォークリフトなどの工業車両や鉱山用無人ダンプなどに電動化ソリューションを提供し、安全でメンテナンス性の高いBYD製電池が採用されている
さらに電子機器向け電池としては、BYDは創業当初より携帯電話・ノートPC向けリチウムイオン電池を主要事業としており、2000年代にはNokiaの主要サプライヤーを務めた実績がある(現在もBYD Electronicsがスマートフォン部品・電池事業を展開中)
このようにBYDの電池製品は「車載(乗用・商用)」「定置型ストレージ」「産業機器」でCATLやLGエナジーソリューションなど他の大手電池メーカーと競合・棲み分けつつ、総合的な製品ラインナップを築いている。
■ 競合製品との比較:
BYDの電池技術は競合他社と比べていくつか特徴がある
まずCATL(寧徳時代)との比較では、CATLが世界シェア1位の電池専業メーカーであるのに対し、BYDはEV完成車メーカーでもある点が大きな違いである
そのためBYDは自社需要を内製電池で賄う垂直統合モデルを強みとし、2024年の世界EV電池シェアはCATLの37.9%に次ぐ17.2%で世界2位となっている
CATLもLFPとNCM双方で高い技術力を持つが、BYDのブレードバッテリーは安全性で優位性が高いとされ、CATLが発表した高密度パック技術「麒麟電池(Qilin Battery)」と並び業界をリードする革新と評価される
またLG、パナソニックなど海外メーカーと比べると、BYDはLFP系を主軸とする点で異なる
LGやパナソニックは高ニッケルNCM/NCA電池でリードしてきたが再評価されつつあり、BYDはそのトレンドを先取りした形である
もっともエネルギー密度では依然として高ニッケル系に軍配が上がるため、高性能EV向け電池ではCATLやLGが開発する新型電池(例えばCATLの半固体電池搭載のEVや、LGのNCMA電池など)との競争が続いている
総括すると、BYDは「安全・低コストのLFPで強み、垂直統合でスピーディーに製品展開」**という独自路線で市場シェアを拡大しており、CATLのような専業大手に次ぐ有力電池サプライヤーとして位置付けられる