国軒高科(Gotion High-Tech):製品概要
国軒高科は主にリチウムイオン電池のセルおよび電池パックを製造しており、リン酸鉄リチウム(LFP)電池と三元系(NCM)電池の両方を手掛けている
近年は次世代電池技術の開発にも注力しており、ナトリウムイオン電池や全固体電池など新技術にも取り組んでいる
以下に主な製品タイプと技術的特徴をまとめます
リン酸鉄リチウム(LFP)電池: 安全性と長寿命に優れ、主にエネルギー貯蔵システム(ESS)やコスト重視のEV向けに提供されています
国軒高科はLFP技術の高性能化にも注力しており、マンガンを添加したLMFP(リチウムマンガン鉄リン酸塩)電池「Astroinno L600」を開発しました
この電池セルは重量エネルギー密度240Wh/kg・体積エネルギー密度525Wh/Lを実現し、室温で4,000回の充放電サイクル寿命を持つなど、NCM電池に迫る性能を達成している
パックシステムとしてのエネルギー密度は190Wh/kgに達し、NCM電池搭載パックを上回る1000km走行レンジを実現可能と報告されている
LMFP実用化にあたっては米国クリーブランドの研究所と連携し、高温下での劣化要因(Mn溶出など)を克服する新電解質技術も開発した
Astroinno L600電池は2024年に量産開始予定で、レイアウト効率向上(セル-to-パック比76%)やパック軽量化技術も導入される
三元系(NCM)電池
高ニッケルNCMによる高エネルギー密度セルを展開している
国軒高科は大型円筒型セル「Stellary Battery」を開発しており、直径46mmの円筒フォーマットでエネルギー密度285Wh/kg・容積密度775Wh/Lを達成している
このセルは4C急速充電(10~70%充電を約9分で達成)に対応し、常温で2,500サイクル後でも容量維持率70%を確保しています
同社第7世代工場で高い自動化生産を行い、従来比で労務コスト37.5%減・製造コスト50%減を実現した
NCM電池は主に航続距離重視のEV向けに供給され、例えば100kWh超の大容量パック構成で800km級の航続を可能としている
超高速充電電池「G-Current」
国軒高科が2024年に発表した新製品で、LFP/NCM双方のセル構chem対応のモジュールレス設計パックです
5C充電に対応しており、理論上は20分(実用条件で約25分)で0→100%充電が可能
実際0→80%充電を約9.8分、90%まで15分で達成し得る高速充電性能を持ち、PHEV(プラグインハイブリッド)にも4C充電で10分充電80%が適用可能です
容量構成はLFP版で75kWh(600km走行レンジ)、NCM版で100kWh超(800kmレンジ)とされます
中国国内でも最高クラスの充電性能と謳われ、既に量産が開始され複数のEV搭載が予定されています
全固体電池(オールソリッド)
2024年の技術カンファレンスで初の全固体電池試作「Gemstone」を公開しました
固体電解質を用いた先進セルで、重量エネルギー密度350Wh/kg・体積エネルギー密度800Wh/Lを達成し、同サイズの従来NCM比でエネルギー密度が40%向上している
バッテリーパックシステムとしてはエネルギー密度280Wh/kgに達し、EVで1,000km以上の航続を可能にします
寿命性能も優れており、約3,000サイクル以上の充放電でも大きな劣化なしに100万kmの走行に耐えるとされている
現時点では試作第1世代ですが、同社はVW社の「ユニファイドセル(統一規格電池)」サプライヤーにも選定されており、将来的な固体電池の実用化にも注力しています
023年に開催された技術発表会にて、国軒高科が初公開した全固体電池(Gemstone)パックの発表の様子
「全固态电池(全固体電池)」と書かれたスライドに、固体電池を搭載したEVの模式図が示されている
用途別展開
国軒高科の電池は、乗用車(Passenger EV)から商用車(バス・トラック等)、特殊車両(建設機械等)まで幅広い車両向けに採用されています
特に、中国国内のEVメーカー各社や、同社に戦略出資するフォルクスワーゲン(VW)グループ向けに車載電池を供給しており、VWのHEV向け電池にも採用されている
また、エネルギー貯蔵システム(定置型蓄電)分野にも注力しており、大型の蓄電池コンテナや家庭用蓄電システム向けの電池パックを製造しています
国軒高科の電池製品はタイやインドネシアなど海外にも輸出されており、通信基地局用バックアップ電源や再生可能エネルギー由来電力の貯蔵用途にも利用が拡大しています
競合製品との比較
国軒高科は、中国トップのCATLやBYDに次ぐ地位を築きつつあります
例えば、CATLが発表した超高速充電対応LFP電池「神行(Shenxing)」は10分充電で400km走行を可能にするとされますが、国軒高科のG-Currentも同様に10分程度で80~90%充電が可能な性能を示しています
エネルギー密度の面では、BYDの「ブレードバッテリー」(LFP)は安全性重視でややエネルギー密度が劣る一方、国軒高科のLMFP電池はパック密度190Wh/kgと現行のNCM電池パックを凌ぐ水準を達成しています
CALBやEVEなど中国の他の電池メーカーもLMFPや全固体電池開発を進めていますが、国軒高科はすでにVWと提携して統一規格電池を受注するなど、一部分野で先行しています
LGエナジーソリューションやパナソニックといった海外メーカーが高ニッケルNCMや円筒電池に強みを持つ中、国軒高科も46mm円筒セルで対抗しつつ、LFP系でのコスト優位性を武器にグローバル市場で存在感を高めています