国軒高科(Gotion High-Tech):国際展開状況と主要海外顧客・提携先
国軒高科は近年、国内市場の競争激化を背景に「出海」(海外進出)戦略を強力に推し進めています
その最優先課題は海外での市場シェア拡大と新たな需要の取り込みであり、アジア太平洋、欧州・アフリカ、米州の三大海外市場を開拓してグローバルな市場体系を構築する方針です
経営陣も「海外市場こそ事業成長の重要な源泉であり、たとえ高負債でもグローバル化戦略を揺るがず実行する」と強調している
国際展開の状況:
既に前述の通り、米国・ドイツ・ベトナムなど世界各地に製造拠点やR&D拠点を設けています
特にフォルクスワーゲン(VW)との資本提携(2020年)以降、欧州市場への進出が加速しました
VWとは技術提携とサプライ契約を結び、VWが計画する「統一規格電池(Unified Cell)」の最初の指名サプライヤーとなっています
これにより、VWの電気自動車プラットフォーム向けに国軒高科の電池が採用される見込みです
またVWは自社の独シルケボー(ザルツギッター)工場での電池生産にも国軒高科の技術を活用する意向を示しています
欧州では他にも、前述のスロバキアInoBat社に25%出資し、合弁での大型工場建設計画を進めるなど、現地パートナーとの連携を強めています
米国市場では、現地法人Gotion, Inc.(本部:カリフォルニア州)を通じて自動車OEMやエネルギー企業との関係構築を行っています
主要顧客としては、**米国ビッグスリー(GM、Ford、Stellantis)や新興EVメーカーが想定され、イリノイ州工場建設にあたっては州政府や地元企業との協力関係を築いています
またエネルギー貯蔵分野では、太陽光発電+蓄電の需要に応えるため、家庭用ESSメーカーや独立電力プロバイダーとも提携を進めています
アジア太平洋では、インドの自動車市場参入も視野に入れています
2023年にはタイやインドネシア向けに電池輸出実績があり、現地EVメーカーへの供給ルートを開拓しました
東南アジアではマレーシア国営企業との協業でパック工場新設計画が報じられるなど、地域ハブを作る動きがあります
日本企業との連携は目立ちませんが、素材や設備面で間接的に繋がりがあるほか、日本の車載電池市場にも製品提案を行っています
主要海外顧客・提携先
何と言っても最大のパートナーはフォルクスワーゲン(Volkswagen)グループです
VWは戦略株主としてだけでなく、技術開発やサプライチェーン構築でも国軒高科と協働しています
2022年には国軒高科がVWから「バッテリー部門優秀サプライヤー賞」を受賞しており、VWの電動化戦略における重要協力企業と位置付けられています
VW以外では、中国国内の完成車メーカー(江淮汽車、小鵬汽車、哪吒汽車など)が主要顧客に挙げられます
特に江淮汽車(JAC)は安徽省で国軒高科と地縁が近く、創業初期から電池を供給しています
また吉利汽車や広汽集団などにも納入実績があります
海外では、電池スタートアップとの提携も特徴的です。前述のスロバキアInoBatだけでなく、アルゼンチン企業JEMSEとの提携により電池材料の現地生産に乗り出しています
これにより南米のリソース確保と将来的な製品供給で先手を打っています
さらにBASFとの協業は、素材サプライチェーンの強化に直結します
高性能カソード材料やリサイクル技術で強みを持つBASFとの連携により、欧州での環境規制に対応した電池材料調達を確立できます
また北米では、地域電力会社(例:コムエド社)とも連携し工場誘致を進めました
政治・政策面のリスクにも留意し、各国政府とも良好な関係構築を図っています
例えば前述のイリノイ州では州政府の巨大誘致策を活用し、スロバキアやモロッコでも政府支援を獲得しました
一方で、米中・欧中関係の不確実性もあり、海外生産を行っても補助金対象外となる可能性などリスクも指摘されています
しかし国軒高科の張翔副総経理は「この千載一遇の機会を逃すわけにはいかない」として果敢に海外展開を進める意向を示しています
総じて、国軒高科の国際展開は中国電池メーカーの中でも積極的であり、VWという強力な後ろ盾を得て欧米市場での足掛かりを築きつつあります
海外売上比率は短期間で30%に上昇しており、今後数年で更なる拡大が予想されます
主要顧客・パートナーとの協調を深めつつ、現地生産や技術提携を駆使してグローバル競争に挑む国軒高科の動向は、CATLやBYDと並び電池業界における重要トピックとなっています