EVE Energy(惠州億緯鋰能)詳細調査レポート: 競合製品との比較(CATL、BYD、LGエナジーソリューション、CALBなど)

EVE_ENERGY惠州億緯鋰能
CATL(寧徳時代)との比較
CATLは世界シェア36.8%を占める業界最大手で、EVEのシェア2.3%とは差が大きいのが現状です
しかしEVEは特定ニッチで健闘しており、例えばエネルギー貯蔵用セルでは世界第3位につけています
CATLは大規模生産によるコスト優位性と20%以上とも言われる高い粗利益率を誇りますが、EVEは2024年時点で粗利率10〜15%程度に留まり、コスト競争力で劣ります
技術面ではCATLがKirin電池(CTP統合化)、Naイオン電池の発表など技術リーダーシップを示す中、EVEも大型円筒セルの先行やTeslaとの取引獲得で存在感を高めています
CATLは主に角型セルで実績を積んできましたが、BMW向け円筒セル供給ではEVEが一部受注を獲得するなど、フォーマットの違いを武器に競合しています
とはいえ総合力ではなおCATLが上回り、EVEはコスト構造の改善や生産規模拡大で差を埋める必要があります

BYD(比亜迪)との比較
BYDは世界シェア15.8%で第2位の電池メーカー(かつEVメーカー)です
LFP系「ブレードバッテリー」の発明で知られ、社内需要に加えトヨタ等外販も進めています
EVEとBYDの相違点は、BYDが自動車OEMとして垂直統合している点となります
一方EVEは独立系サプライヤーとして様々な顧客に供給できる強みがあります
技術的には両社ともLFPに強みがありますが、BYDのブレード電池は薄型角型構造でパック体積効率に優れ、EVEは大型セル戦略で勝負しています
海外展開ではBYDはハンガリーやタイにEV工場を構えつつ電池事業も展開していますが、外部顧客向け電池供給はまだ限定的でしょう
EVEはBMW・テスラなど外部顧客を次々開拓している点で、事業モデルが異なります
収益性ではBYDも粗利率15%前後と言われ、EVEと大差ありません
今後、BYDが他社向け電池供給を拡大すれば直接競合が増す可能性がありますが、現時点では両社は棲み分けがなされている部分もあります

LGエナジーソリューション(LGES)との比較
LGESは韓国の電池大手でシェア13.6%(世界3位)を持ち、北米・欧州・アジアに広がるグローバル生産拠点網を有します
製品形態はパウチ型や円筒型が主力で、テスラの2170円筒セルやGMのUltiumパウチセルを供給するなど、ビッグ3自動車メーカーとの長年の協業関係が強みです
EVEはLGほどのグローバルプレゼンスはまだありませんが、ハンガリー・米国などへの進出で追随を図っています
技術水準では両社ともNCM高容量化やコバルトフリー化など先端開発を競っています
違いとして、LGは安全問題(2019〜2020年のリコール)を経験し品質改善を重視していますが、EVEはまだ大きな品質事故がなく、「高品質」を売りに市場参入を狙っています
今後北米市場では、EVEが現地生産を持たない分、IRA補助金の恩恵を得にくくLGが有利とも指摘されています
しかし、EVEは合弁JVで北米生産に取り組み始めており、将来的にはGM・フォードなどへの売り込みも視野に入れていると見られます
LGとの差を埋めるには、大手OEMとの長期契約獲得と現地生産拡大が課題です

CALB(中創新航)との比較
CALBは中国の独立系電池メーカーで世界シェア4.7%(6位)です
製品は角型セルが中心で、広州汽車や長城汽車など中国OEMへの採用実績があります。EVEとCALBは事業モデルが似通っており、ともに外販専業で海外進出にも積極的です
規模ではCALBの方がやや大きく、江蘇・福建などに大型工場を構えています
両社はしばしば同じ入札案件で競合するとされ、特にエネルギー貯蔵プロジェクトでは激しいシェア争いを繰り広げています
ただ技術アプローチには差があり、CALBは高ニッケル三元系に注力し高性能路線でCATL追随を図るのに対し、EVEは円筒型や海外OEM提携といった差別化戦略を取っています
CALBも欧州(例えばポルトガル)で工場計画があり、今後海外市場で直接ぶつかるでしょう
コストや品質面では大きな差はないとの評価もありますが、テスラとの取引など象徴的案件を取ったEVEに対し、CALBはVWグループとの提携模索など動きを見せており、競争は熾烈です

Gotion High-Tech(国軒高科)との比較
Gotionは中国VW系の電池メーカーでシェア2.4%(8位)です
LFPが強みで、VWから出資を受け欧州ザルツギッターに工場建設中です
EVEとGotionは規模・製品が近く、両社ともESS用途で実績があります
違いは、GotionはVWという大口顧客を背景に持つ点で、EVEのBMW・テスラとの関係に相当します
技術面ではGotionはマンガン系リチウム鉄電池(LMFP)の先行開発で注目され、エネルギー密度向上を図っています
一方EVEは大型円筒セルで先行しています
欧州でGotionが独VW系需要を抑える中、EVEは汎用市場(電力会社系ESSや他の欧州OEM)を狙う構図となっています
両社とも粗利益率は10%台前半で、CATLやLGに比べ規模の経済が効きにくい状況です
今後、技術革新や提携戦略で如何に差異化するかが両社共通の課題でしょう

その他競合
サムスンSDI(韓国、第7位、4.6%)やパナソニック(日本、第4位、6.4%)も主要プレイヤーです
これらとの比較では、EVEはまだシェアやブランド力で劣るものの、特定ニーズへの適応力(例えばパナソニックが重視しないESS用途に注力)で台頭してきました
また、中国市場に強く食い込んでいる点は韓国・日本勢に対する優位です
総じて、EVEは後発で規模は小さいものの、エネルギー貯蔵用電池という高成長ニッチと大型円筒セルという差別化技術で存在感を示しつつあります
他社に比べ利益率が低いため、今後は生産効率向上や上流統合で収益力強化を図りつつ、戦略的パートナーシップ(テスラ・BMW等)を梃子にシェア拡大を狙っています